止まない雨はないから。[青] -2nd- (ページ11)

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56話ページ11

-岩本side-

揺らさない様に慎重に。

でも、出来るだけスピード重視。

そんな風に、誰かを背負って事務所内を走るのは初めてだ。

感じるのは驚く程に軽すぎる体重と、背中に触れる出っ張った肋骨。

それから、尋常じゃない熱気。

翔太の様子を見ながら併走してくれるラウールと一緒に廊下を進んで行くと、途中ですれ違う後輩やスタッフさんに心配されて…

目撃者はかなりの人数になりそうだな、なんて。

そうこうしてる内にエレベーターの前。

乗り込む直前にラウールは会議室に戻るように言ったら、多少渋ったものの頷いてくれた。

岩｢絶対大丈夫だからな。心配すんな。｣

ラ｢…うん。｣

軽く手を振ると扉が閉まり、向かう先は一階。

密室故に、耳元で聞こえ続ける喘鳴が更に大きく聞こえて…

ラウールにあんな事を言った癖に心配で気が狂いそうになりつつ、この局面を切り抜ける。

エレベーターを降りてロビーを抜け、正面玄関を出れば…

人目につかない少し離れた場所に停められた、見慣れたマネージャーの車。

けれど、その傍らに立つ独特な雰囲気を纏う彼の事は、全くもって予想外だった。

岩｢へ？あれ、舘さん？何で？打ち合わせは？｣

宮｢抜けてきた。リーダーの照が打ち合わせ中に居なくなったら皆が困るでしょ。俺は衣装の手直しだけだったから。｣

岩｢いや、でも…｣

宮｢それに、翔太の事が心配なの。俺に付き添わせて。お願い。｣

珍しく俺の言葉を遮った舘さんは…

いつもの凛々しい表情とは違って不安げに瞳を揺らしながら、俺の背中で力の抜けきった翔太を見つめる。

舘さんにとって翔太はメンバーである前に大事な幼馴染で、俺達よりずっと長い時間を過ごしてきた。

お互いを信頼して、尊敬し合う。

シンメトリーな無二の存在。

心配するのは当然だから、翔太の付き添いは舘さんに任せる事にした。