ずっと、君と共に。[橙]

18話 ページ19

-阿部side-





泣いたって事は、処置を受けた時に一度目を覚ましたんだろうか。



目黒にｷﾞｭｯと手を握り締められて眠る康二は、まだまだ顔色も悪くて頬も上気してる。




額を触ってみれば掌にｼﾞﾜｯとした熱を感じて、熱が下がってない事は明らか。



時々魘されるみたいに唸るから心配になるけど、この高熱じゃ起こすのも躊躇われて、考えてる内にまた静かな眠りに戻る。




そんな事を繰り返しながら暫く様子を見てたら、不意に後ろのカーテンが開いて…


白衣を着たダンディなおじさん先生が、俺達の方に頭を下げて会釈した。





医｢突然すみません。少々お時間宜しいですか？｣



阿｢あ、はい。｣



医｢実は先程、向井さんを処置させて頂いた際、気になる事がありまして…｣





少し難しい顔をした先生は、俺達の目を真っ直ぐに見つめてほんの数秒間を空けると、真面目なトーンでよく分からない事を言い出した。



"向井さんは聴覚障がいをお持ちですか？"と。




俺も目黒も勿論すぐに否定して、自分達の職業とか色々説明したけど、先生は相も変わらず難しい顔をするだけ。



そして、暫く考え込んだ後、"大変申し上げにくいのですが…"なんて前置いて、衝撃的な事を口にしたんだ。





医｢向井さんは処置中に目を覚まされ、うわ言の様に何度も"聞こえない"と言って過呼吸を起こされまして…酷くパニック状態でしたので、今は鎮静剤を打って眠って頂いてるんです。｣



阿｢えっと、それは…｣



医｢検査をしてみなければ詳しい事は何とも言えませんが、向井さんは恐らく…耳が聞こえておられないかと。｣



阿｢ｯ…えっ…？｣

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