14話 ページ15
-向井side-
最初に異変に気が付いたのは、頭から被ったシャワーの音が少ししか聞こえへんかった事やった。
強い水圧で髪を濡らす音。
水栓を捻る音。
お湯が床に打ち付ける音。
それら全部が、どこか輪郭がぼやけた様に感じて上手く聞き取れない。
向「ッ…えっ……」
驚きと戸惑いが混ざって発したそんな声も、俺自身の耳には届かへんくて、途端にパニック状態になってもうた。
【まさか】
【もしかして】
【そんな筈は】
…って、脳内に埋め尽くされる言葉。
でも、考えたくなくても、頭は酷な答えに俺を導く。
心臓が高く跳ねて、バクバクと大きな鼓動がこの体を揺さぶる。
それでも、俺はまだ信じたくなくて、ギュッと唇を結んだんや。
嫌な思考を搔き消すみたいにシャンプーを出した手で頭を掻き毟って、強い水圧のシャワーで汗と一緒に流してしまえって。
けどな、逃げたって何も変わらんかったよ。
信じたくなくても、目の前に答えを突き付けられたよ。
お風呂場から出て、服を着て、震える手で握ったドライヤー。
大きな音を出すそれは、今の俺にとって恐怖の対象。
それでも意を決してスイッチを入れたら、やっぱり現実やと思い知らされた。
向「…ッ…音、遠い…っ…」
ドライヤーは目の前やのに、まるで数十m離れてるみたい。
自分が出した声は、やはり遠くどころか届く事すらない。
【耳が聞こえない】
そう自覚した瞬間、サーッと体中から血の気が引く感覚がした。
手から滑り落ちたドライヤーが床に叩き付けられて、鏡台のコンセントからプラグが抜ける。
その衝撃音すら拾えない事に涙が溢れそうになりながら、洗面所を出て歩き出し…
平静を失って何が何だか分からずに冷えた廊下を進むと、覚束無い足取りでソファの近くに座り込む。
そして、無意識に手を伸ばしたのは、全員笑顔でピースしたSnowManがホーム画面に設定された、スマートフォンやった。
1271人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
和音(プロフ) - ほのかさん» 初めまして。コメントありがとうございます!そう言って頂けて、とても嬉しいです(^^)まだまだ稚拙な文章ではありますが、引き続きお付き合い頂ければ幸いです(^^) (2020年5月19日 18時) (レス) id: eff15bf988 (このIDを非表示/違反報告)
ほのか(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。この占ツクでたくさんの作品を読ませていただいてるのですが、主様の作品が今1番更新されて嬉しい作品です!!すごく大好きです!これからも楽しみにしています^ ^ (2020年5月19日 14時) (レス) id: 8996cfb164 (このIDを非表示/違反報告)
和音(プロフ) - ゆうさん» コメント並びに、嬉しいお言葉をありがとうございます!まだまだ序盤ではありますが、引き続きお付き合い頂ければ幸いです(^^) (2020年5月17日 22時) (レス) id: eff15bf988 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - めっちゃ引き込まれました!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2020年5月17日 20時) (レス) id: a893233080 (このIDを非表示/違反報告)
和音(プロフ) - ぴぴたんさん» 初めまして。コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しい限りです(^^)まだまだ始まったばかりで先は長いですが、引き続きこの作品を宜しくお願い致します(^^) (2020年5月15日 23時) (レス) id: eff15bf988 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:和音 | 作成日時:2020年5月10日 19時