story＊154 ページ9
桐｢中村さん…避難せな、東軍がこの辺りを通るかも分からんから危険なんよ。近所のお友達にも言うて、一緒に逃げましょう？｣
｢お役人様…私らもなぁ、そうしたいのは山々なんやけど…避難バスが来んのやから逃げようがないんよ…
こんな足腰じゃ、歩いて第2地区まで行くことも出来ないし、電車の最寄り駅やって20kmも先…ねぇ、無理でしょう…？｣
桐｢でも…そしたら、皆さんは…？｣
｢ここに残りますよ、皆で。…死なない事を願って、息を潜めて。｣
…あの青年達の言ってた通り、取り残されたお年寄りは沢山居った。
でも、どの家に行っても、どの方に話を聞いても、自力で避難しようって考える人は居らんくて…皆、口を揃えて"ここに残る"って言うばかり。
…けど、それもその筈。浜中に詳しく調べさせたら、この辺りには地下鉄の駅はおろか地下シェルターも貯水施設も無い。
まさに、政府で決まった【国民を守る為の最善の案】に生じた穴やった。
塞ごうにも塞げへん、深い穴。
…でも、だからと言ってこんな所に住民達を置き去りにすれば、危険に晒す事になるのは明らかで…
この国の騎士団長である俺がそんな判断をしたら王様が任命責任を問われ、俺自身も世界各国から一斉に非難を浴びるやろう。
せやけど…それより何より、ここに500人を置き去りにし、EASTの手にかかる様な事態にする事は絶対に避けたくて…皆の安全の為に必ず避難させたくて…何か策がないかって考え込む。
とは言え、そう簡単にいい案なんて浮かんではくれへんくて、また一人の住民の家から外に出ると…
目の前を数人の騎士が通り掛かって、俺と目が合うなりﾊｯとした顔をして頭を下げた。
〔お疲れ様です！桐山騎士団長様ｯ！浜中副団長様ｯ！〕
[おっ、お初にお目にかかります！！]
桐｢あぁ、にしてもお前ら…さっき居らんかったよな？俺達がここに着いた時に支部の前を通った筈やけど、宿直の3名しか姿が見えへんかった。
このクソ忙しい時に外回りしてたって訳でもないんやろ？この一丁目の騎士のくせに…どこ行ってたんや、言うてみろ。お前らの"ドン"である、この俺になぁ？｣
目元は一切動かさんと口角だけを上げて、真っ黒な笑顔で追い込むように騎士達を見る。
途端に怯えた表情になった彼らは、俺のダイヤの右腕と怒った顔を交互に見て、また勢いよく頭を下げた。
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和音(プロフ) - ぷにぷに部部長さん» コメントありがとうございます。SF系の漫画をよく読むので、そちらに作風が寄ってしまうのかなと思いつつ、美しいというお言葉を頂けた事に驚きと共に嬉しい気持ちでいっぱいです(^^)至らない所も多々あるかと思いますが、これからも読んで頂けると嬉しいです(^^) (2020年2月21日 22時) (
レス) id: eff15bf988 (このIDを非表示/違反報告)
ぷにぷに部部長 - ローゼンボーイズの方も、vol.1からずっと読んでいます！和音様の世界観は、あんまり上手く言えないんですけど、なんかきらきら、ふわふわしてて、人一人の設定や、小物（？）の名前などが凄く凝っていて、一つ一つが美しいような感じです！ (2020年2月21日 19時) (レス) id: 37843f0dfb (このIDを非表示/違反報告)
ぷにぷに部部長 - はじめまして、第1章の頃から、愛読させていただいてます！一話読む度に、どんどん和音様の世界観に引き込まれていきます！初めからワクワク、ドキドキ？笑が止まりません！！更新頑張ってください！ (2020年2月21日 18時) (レス) id: 37843f0dfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(は)(プロフ) - 和音さん» 和音さんの表現の仕方や細かい設定、言葉遣いがとても惹かれて更新楽しみにする日々です！長編を書くのは根気がいるのでとても大変だとは思いますが、陰ながら応援しております。 (2020年2月19日 10時) (レス) id: 72b049040e (このIDを非表示/違反報告)
和音(プロフ) - ゆず(は)さん» 初めまして。コメントありがとうございます。シリーズ物の長編小説ばかり書いているので、飽きられていないかな...と心配でしたが、そう言って頂けて嬉しいです(^^)お話はまだまだ続きますが、引き続きこの小説を宜しくお願いします(^^) (2020年2月17日 17時) (レス) id: eff15bf988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和音
| 作成日時：2020年2月15日 10時
