Voyage.3 (ページ26)

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そして翌日。

年上の人たちに囲まれて予約してあるお店に向かった。

中に入り、それぞれ席につく。

俺は左利きなのをいいことに一番端っこに座らせてもらった。

運ばれてきたのはまさかの一人一人分けられたコース料理。

食べなければ一人悪目立ちをしてしまう。

部長「さあ、みんなたくさん食べるんだぞ。ニノくんも細っこいんだからたくさん食べてな」

和「あ、はい」

とりあえず、一番食べられそうな茶碗蒸しから食べ始める。

食べられるのは茶碗蒸しと白米と味噌汁くらいしかない。

どうしよう、と頭の中はフル回転。

頑張ってちまちまと食べていると上司が近づいてきた。

上司「あれ、ニノくん全然食べてないじゃん！せっかく今日は部長が出してくれるんだから、ありがたく食べな！ね！」

そう言って背中をバシバシと叩いてくる。

苦笑いしながら苦手なお刺身と赤身の牛肉を食べ始めた。

はぁ...最悪。

時間をかけてなんとか全てを食べ終え、それからは少しずつお酒を飲みながらみんなの今までの思い出話や、上司の趣味の話などを頷きながら聞き流す。

上司の輪の中には入りつつも、内心は帰りたくて仕方がなかった。

なんだかさっきから胃がおかしい気がする。

自分が変に意識しすぎなのかもしれない、と思ってなんとか話を聞いて紛らわせる。

しかし、しばらくするとそれは明らかな不快感として襲ってきた。

胃が重い...胸のあたりがモヤモヤする...

この感覚を俺は知ってる。
早く帰らないとまずいことになる。

俺は意を決して部長の元に行く。

和「部長、僕、今日この後用事があるので、この辺で失礼させていただいてもいいですか？」

部長「そうかそうか、それは仕方ないな！、、なんか二宮くん顔色悪いぞ。大丈夫か？」

和「大丈夫です。短い間ですが、今まで大変お世話になりました。」

部長「こちらこそ、二宮くんの吸収の速さには何度も驚かされたよ。これからも実力を積み重ねていって、いずれは会社を引っ張っていく存在になれよ！」

和「はい！ありがとうございます」

そう言ってもう一度ペコリとお辞儀をしてその場を去る。

部長はとても優しい人で、俺の様子を見て「早く帰んな」と言ってくれた。

いい上司だったな、と思いながら店を出る。

でも、もうそんなことを思っていられる時間も長くはなさそう。