不倫の話。 (ページ8)

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Chapter 7 ページ8

旦那を家から引っ張り出し、警察を呼んだ。

彼は暴力とセクハラの容疑で逮捕されるだろう。

隆平は椅子に座りながら、皮がめくれた手を指でなぞっている。

「隆平、」

彼の名前を呼ぶと隆平の体は強張り、彼は無理矢理笑顔を作った。

『ん？』

「ありがとう」

『嫌、俺何もしてないで』

「でももういいよ」

『え？』

「もう私のために頑張らなくて良いよ」

そう言い、わがままな私は隆平の家を走り出た。

隆平がもう傷つかないように。

隆平が私の為に自分を犠牲にしないように。

大通りに出て少し歩き、ゴミに埋もれている人気のない小さな道へ入る。

「○○くん？」

『A？』

上から声がして上を向くと、建物の上に座っている○○くんと目があった。

『久しぶりやな』

クリッとした目を輝かせて話す○○くん。

「うん」

『ちょっと待ってて』

降りるわ、と言い○○くんが消えたと思えばすぐ建物の間から出てきた。

「忍者みたい」

私がそう言うと優しく微笑み、触れるだけのキスを私の唇の上に落とした。

そのキスが優しすぎて、懐かしすぎて涙が私の目から溢れた。

○○くんは何も問わず、ただ私の事をゆっくりと抱きしめた。

私が泣き止むと、○○くんは私の手を取り彼の家の方向へと引っ張った。

○○くんの家は相変わらず汚く、空のビールの缶が色んな所に散らかっている。

家の中で唯一綺麗なのは○○くんが私の為に作ってくれた"私の部屋"。

薄ピンクのシーツの上には彼のハーモニカ。

『お前のこと考えてたら吹きたくなってん。』

「嬉しい」

そう私が答え、振り返ると彼は彼の唇を私の唇に重ね、今度はもうちょっと深めのキスをしてきた。

『いいやろ？』

私がゆっくりと頷くと○○くんは私を優しく押し倒した。