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「あの世で沙織に会ったら・・・お前の娘は幸せになったぞと。
ワシが見込んだ人と婚約したって伝えてやれる」
嬉しそうに微笑む祖父。
「おじいちゃん・・・実はっ・・・」
偽装結婚だと伝えようとするが、雅紀さんに止められる。
「・・・気持ちは分かる。でも、ここは敬三様の思いを
無駄にしたくないんだ」
「・・・結婚式まで見届けたかった・・・。
聡くんは良い子だったのに・・・沙織を取られるのが嫌で
縁を切ってしまった・・・。俺の頑固さで葬式にも行ってやれなかった・・・。
その罰が当たったのだろう・・・。孫の結婚式が目前だというのに
見届けてやれない」
祖父は涙をポロポロと流しながら言う。
「・・・おじいちゃん」
「・・・A。最期に顔を良く見せてほしい」
あたしは祖父のベッドの横にしゃがむと、祖父はしわしわの手で
あたしの頬を撫でた。
「・・・大きくなったなぁ。A。
雅紀と・・・幸せになるんだよ・・・」
祖父はそう言って目を閉じた。
「おじいちゃん・・・・おじいちゃん・・・」
祖父を勘違いしていた。
本当は・・・とっても優しいおじいちゃんだったのに。
両親がよく言っていた意味が分かった。
“おじいちゃんを恨まないでね”って。
こういうことだったのか・・・。
こんなに優しい祖父を軽蔑して会いに行かなかった。
そのうえ、危篤状態だったというのに会わないという
選択もしたのだ。
気付くのが・・・遅かった。
「・・・Aさん」
雅紀さんはあたしの肩を抱く。
「・・・俺がもっと早く敬三様の意思を
伝えれば良かったんだ。ごめんね」
「雅紀さんは・・・悪くないです。
あたしが・・・」
冷たくなった祖父の前であたし達はしばらく
涙を零し続けた。
「Aさん。雅紀の父親である春次です。
敬三様には大変お世話になりました。私としては、
敬三様のご遺志を尊重したく、Aさんの協力を
得たくて挨拶に来ました。帰る前に少々お時間
宜しいでしょうか？」
「はい。分かりました」
あたしは春次さんに別室に案内され、祖父の遺言に
ついて話を受けた。
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作者名：黒猫* | 作成日時：2019年3月26日 14時
