夢桜４* (ページ7)

今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:37,023 hit

１５７* ページ7

「それでは、行ってまいります」

あたしは菊さんから頂いた花魁服を持ち、華屋へと向かった。

菊さんの元でしっかりと遊女の作法は学んだからできるはず。

あっという間に華屋に着き、入口の男の人に止められる。

「見ない顔だが、用件は？」

「華屋で働きたくて」

「ここは一般客が気軽に入れるような場所ではない。

ある程度作法と知識が無ければ働けない」

「遊女として町を渡り歩いています」

「・・・沙耶様に聞いてくる。ここで待て」

「承知しました」

見張りの人がいるのは予想していたけどここを通れなかったら

潜入どころではない。その時は仕方なく強行突破でも・・・。

「名はなんという」

ふと顔を見上げると綺麗に顔が整った女性が立っていた。

「菫と申します」

「菫か。今宵の宴でそちの力量を見せてもらおう」

「喜んで」

ここにお世話になるのは情報が手に入るまでだ。

今晩情報が手に入れば用はない。

「私は沙耶。ここ華屋の経営者。

今宵は特別な客が来る。無礼のないように。

着替えはそこの部屋で済ませて」

「はい」

沙耶さんの言われた通り部屋に入ると、妖艶な雰囲気ばかりの

綺麗な女性ばかりいた。

「今日からお世話になります菫と申します」

丁寧にお辞儀をする。

「沙耶さんが新人をいきなり宴に出すなんて珍しい。

何者なの？」

「遊女として町を渡り歩いています」

「ここらにはどの用で？」

「色々とありまして」

これ以上深く詮索されないようにあたしは準備を始めた。

沙耶さんが言っていた特別な客・・・。

恐らく倒幕派の人たちだろう。

久しぶりに花魁服に身を包む。

いつも着ている着物とは違い、露出が増えて恥ずかしい。

「菫。行くよ」

「はい」

部屋から連れられて向かったのは大宴会場。

「どのようなお客さん達なんですか？」

と隣にいた遊女にこそりと聞いてみる。

「華屋は表向きは普通の遊郭だけど町はずれに建てられているから

倒幕を狙う人たちが集まって会合を開くんだ。

今日はその会合の日だよ。無礼のないようにね」

そう言って遊女はお酒を注ぎに行った。