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「ゆっくり投げるよ」
あたしは内田君に向かってゆっくりボールを投げたが、
空振り。
「しっかりボール見て。もう一回行くよ」
さらにゆっくりボールを投げたが空振り。
「いたい・・・」
足をくじいたらしく、右足をおさえ座り込む一樹君。
どこにくじく要素があったのだろうか。
「こっち来て。テーピングする」
一樹君をベンチに座らせ、テーピングの準備をする。
「何？どうしたの？」
和君が話しかける。
「足をくじいちゃったらしくて」
「え？そうなの？バッティング練習で？。
えっと・・・内田君？
内田君は野球部経験者？」
「いいえ。初心者です。
小中学校と吹奏楽部だったので」
テーピングをしながら、和君と一樹君の話を聞く。
「ちなみに、野球部に入部したら
希望するポジションは？」
「バッターです」
自信満々に答える一樹君。
「え？」
思わず聞き直してしまった。
「バッターねぇ・・・。
バッター目指すならバッティング練習で
足をくじかないようにね」
和君は苦笑いでそう言った。
あたしは思った。
あんなゆっくりの球を打てないのに
バッターを目指すなんて言えるのだろうか。
「ねぇ、一樹君。
足をあんまり使わないようにキャッチボールやってみない？」
「うん。そうだね」
一樹君にグローブを渡した。
ボールをうまく取れてキャッチャーをやりたいと思わせないと。
「ゆっくり投げるね」
一樹君に向かってゆっくりと取りやすいボールを
投げた。
一樹君はそのボールをちゃんとキャッチしてくれた。
一安心。
「ねぇ、一樹君。
キャッチャー目指さない？」
「え？なんで？」
「だって初心者なのに、ちゃんとグローブで
ボールをキャッチできるなんてすごいよ」
「そうかな？」
「うん。野球部入ったらキャッチャーになるための
練習しよう」
「分かった」
再びキャッチボールを再開しようとしたときだった。
「集合」
和君の声が聞こえ、集合する。
「朝の練習を終わります。
午後もあるからよろしく。
グランド集合で」
「はい」
威勢のいい返事が返ってきた。
小木先輩のあいさつの後に部員のあいさつで
部活が終わった。
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作者名：黒猫* | 作成日時：2014年5月6日 17時
