【魔法使いと人形の学園生活】ようこそ！マジックドールアカデミーへ！

ようこそ、新入生のみんな！【駆 リオン】 ページ30

　 ―――良かった、間に合った！

快晴の空の下(もと)、ローラースケートを地面に滑らせ、『マジックドールアカデミー 入学式』の看板が掲げられた校門をくぐる。世話焼きな二人の大事な友達のコールもむなしく、友達の一人、カレンの上級魔法にて目覚めたこの学園の音楽教師、駆(かける)リオンは見事に寝坊した。

「はぁはぁ……、ギリギリ、セーフだぁ……｣
「リオン、遅刻してないのが奇跡な程の、『超』大寝坊でしてよ！」
「リオン様、これからは夜更かしなどなさらぬ様に。 ……では、私共(わたしども)はこれから、お暇を頂戴致(ちょうだいいた)します。」
「ありがと、助かった。 ……でも、だからって起こすのに上級魔法は無いじゃん！ それに新入生の名前覚えるのに時間掛かったんだってばってちょっと！ ……って行ったな、あの二人」

小さな二人の友達、『魔法人形(マジックドール)』のカレンとトワは一瞬にして人の姿へと変わり、マントの子達の人混みをかき分けて学園の何処かへと消えていった。入学式、慣れない学園の中で迷っている子も居るだろうから、探して助けてあげます、とは言ってたけど。

「あの格好(カッコ)、すごく目立っちゃうと思うんだけどなあ」

人間の姿をしたカレンはアンティークドレスを身に纏(まと)ったフランス人形もびっくりの美女、トワはパッと見イケメン執事の男装の麗人。あんなのがうろうろ歩けば当然、目立つ。

「今頃二人の所に人だかりとか出来てないと良いけど……」

他人事の様に言って、職員室に向かいながら新入生の名前リストをつぶさに眺める。暗記が大の苦手な僕は人の名前を覚えるのも苦手。なんとか調べて漢字の読み仮名までは振ったけど「今日までにみんなの名前覚えられる気がシナイ……」

マジックドールアカデミーの音楽教師は僕一人。学園(アカデミー)の全員、つまりこの子達全員にも音楽を教える。でも、名前はまだ覚えられないけど、この子達はきっと皆良い子達だ。だからこの子達にも届けるんだ、素晴らしい歌を、音楽を！

この子達全員と仲良くなって、心を開いてやる！ そんな、意気込みで。

「音楽担当、駆リオン！ みんな、僕の舞台へようこそ！」

職員室の扉を勢い良く開けて、僕は思わずそう叫んでしまった。

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