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ほんのりと三日月宗近の体温が、Aの頰に移ったところで、ここへ来た目的を思い出し、口を開いた。


「危うく忘れるところだった。

今日は、Aを迎えに来ただけではなく、依頼をしに来たのだからな。

『任務』を果たさねば」


三日月宗近は、Aから手を離した。


「少し気が引ける内容だが、俺たちは刀剣男士、歴史は守らねばならん」


三日月宗近は、Aから少し離れ、座った。


「依頼内容は、三つ。

一つは。呪い殺してもらいたいものがあるんだ」


「………」


Aは依然として動かず、聞いているのかも危ぶまれた。


だが、この主のことだ。

聞いているに違いないと、三日月宗近は話を続けた。


「蘆屋の一族を、お主以外の全員を、殺してほしい」


「わかった」


ようやく発したのは、了解の言葉。


数日前までいつも聞いていた声のはずなのに、ひどく冷たく、初めて聞いた声のように聞こえた。


Aは、人差し指と中指を口元で構え、ブツブツと祝詞を唱えた。


途端に、あちこちから叫び声が聞こえてきた。
間も無く静かになると、三日月宗近は悲しみとも喜びとも取れる表情を浮かべた。


「ありがとう。二つ目の依頼は、Aの代わりとなる人形を作って欲しい。

Aの全てを写した『人形』を」


Aは、今度は無言で懐から一体の身代わり人形を取り出した。


背を開き、自分の血と髪の毛を一房入れ、閉じる。


人形の頭と自分の頭をくっつけながら、ブツブツと祝詞を唱え、言い終わると同時にそれを宙へ放り投げた。


人形はクルクルと回りながら落ちていき、地面に触れる直前でAの姿に変わった。


それを見た三日月宗近は、心の底から喜ぶように笑みを浮かべた。


どこか恐怖すら覚える、美しすぎる笑みだった。


「ああ、これで……」


三日月宗近の口から、言葉がこぼれた。

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あき(プロフ) - 華音さん» こんにちは。ありがとうございます!とっても嬉しいです。修正したいのですが、時間があまりとれないので、どこがどう間違っているのかも一緒にお伝えしていただきたいです(^^;)読みづらかったとは思いますが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました! (2021年9月16日 12時) (レス) id: aa37dea49f (このIDを非表示/違反報告)
華音(プロフ) - こんばんわ☆初めまして!面白くて感情移入しながら一気読みしてしまいました(^ν^)ただ、所々ですが誤字脱字や一文字抜けている部分がございましたので見直してみて下さいね。 (2021年9月13日 22時) (レス) id: 85eea2d6ee (このIDを非表示/違反報告)
葉月(プロフ) - 一気読みしました!最後の最後に感情を取り戻した呪術師審神者は幸せに暮らせてるといいですね! (2020年2月5日 17時) (レス) id: b5fce10f2a (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 架音さん» いえいえ。今まで読んでいただき、ありがとうございました。 (2019年9月15日 10時) (レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
架音(プロフ) - 遅くなってしまってすみません。最終話まで読ませていただきました。とても感動しました!素敵な作品をありがとうございました!更新お疲れ様でした。 (2019年9月14日 22時) (レス) id: 28682758c8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あき | 作者ホームページ:    
作成日時:2019年4月23日 22時

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