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付近に人の気配を感じなくなると、スーツの男が口を開いた。
「久しぶり……いや、初めましてと言うべきか。
蘆屋A」
「………」
蔵の奥の、何重にも垂らされた白い薄布で隠された、その先にいる娘に声をかけた。
窓すらない部屋の中で、何処かから、桜の花びらが現れ、スーツの男を包む。
Aは、虚ろな瞳でそれを見つめていた。
そして、その花びらの幕が晴れた時、そこにいたのはスーツではなく、高貴な狩衣を着た男だった。
「どうも、洋服という服は窮屈でな。
矢張り、こっちの方が楽だ」
そう独り言ち、Aに向き直った。
「俺は、三日月宗近。
蘆屋A、お主に使える刀だ」
垂れ幕をくぐり、Aの前に立つ。
Aは、汚れ一つ、シミ一つ無い、気持ちの悪いくらい清潔な真っ白な着物を着ていた。
身じろぎひとつせずに、じっと座っているAの姿は、初めて会った時よりも人形らしく見え、本当に生きているのかもわからないほどだった。
三日月宗近は、そのことを気にもとめず、Aを優しく抱きしめた。
「また会えて良かった」
だが、Aは何の反応も示さない。
スッと体を離し、わかっていたこととはいえ、残念そうに眉をひそめる。
「まあ良い、一からやり直せばいいのだからな」
そう言って、Aの頰に手を添える。
酷く体温が低く、桜の下で眠っていたAの身体を思い出し、眉をひそめた。
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あき(プロフ) - 華音さん» こんにちは。ありがとうございます!とっても嬉しいです。修正したいのですが、時間があまりとれないので、どこがどう間違っているのかも一緒にお伝えしていただきたいです(^^;)読みづらかったとは思いますが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました! (2021年9月16日 12時) (レス) id: aa37dea49f (このIDを非表示/違反報告)
華音(プロフ) - こんばんわ☆初めまして!面白くて感情移入しながら一気読みしてしまいました(^ν^)ただ、所々ですが誤字脱字や一文字抜けている部分がございましたので見直してみて下さいね。 (2021年9月13日 22時) (レス) id: 85eea2d6ee (このIDを非表示/違反報告)
葉月(プロフ) - 一気読みしました!最後の最後に感情を取り戻した呪術師審神者は幸せに暮らせてるといいですね! (2020年2月5日 17時) (レス) id: b5fce10f2a (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 架音さん» いえいえ。今まで読んでいただき、ありがとうございました。 (2019年9月15日 10時) (レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
架音(プロフ) - 遅くなってしまってすみません。最終話まで読ませていただきました。とても感動しました!素敵な作品をありがとうございました!更新お疲れ様でした。 (2019年9月14日 22時) (レス) id: 28682758c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あき | 作者ホームページ:
作成日時:2019年4月23日 22時