恋の魔法 *２ (ページ48)

今日:19 hit、昨日:0 hit、合計:241,481 hit

ヒーローの話。／01 ページ48

.

side / waku

物心がついた頃から好きだった。

長いこと一緒にいすぎて、いつから好きだとかは正確には覚えてないけれど。

小学生の頃、可愛い女の子をいじめるとかいう馬鹿な男に泣かされたAを見て、守りたいって思ったときに、気付いたんだと思う。

『湧、ありがとう』

「ん、いいよ、……これからはなんかされる前にお前のこと守るから」

『湧カッコイイね、なんたらレンジャーみたい！』

「……今何レンジャーやってんだろうな、」

カッコイイと言われて舞い上がって、この先もずっとAのことを守るのは俺だと思ってたんだ。

「Aちゃん、漢字のテスト100点とったよ！」

『そうちゃんすごいね！』

「うわ、颯太天才じゃん！」

「でしょ？もっと褒めて！」

その時、守るべき対象はAだけじゃなくって、俺より随分小さかった颯太も、だったのに。

* *

結婚式当日、新郎なんかより新婦の方が時間が掛かるから、暇潰しにスマホを見ていると、知らない番号から着信があった。

登録してなかったけれど、仕事の電話だったら、と思い出ると、切羽詰まった声が聞こえた。

「あの、元木先輩ですよね？うっちーくんが、……」

「……颯太が？」

血の気が引いていくのを感じた。……なんで颯太が？

新婦控え室の扉をノックもせずに開けて、頭を下げる。

「湧？！ちょっと、どうした……、」

「……ごめん、俺行かなきゃ、」

「行かなきゃってどこに？」

「ほんとごめん、後でいくらでも殴ってもいいから、……ごめん、」

説明をする暇もなく、式場を飛び出してタクシーを拾って深田から送ってもらった住所を告げる。

確か、長瀬はAと颯太のこと知ってたから、と端的にメッセージを送る。

早く、早く、信号に引っかかる度にイラついて、それを隠すように、手の平を痛いくらいに握りしめた。

* *

お釣りはいりません、と一万札を手渡して走る。

昨日雨が降ったから水溜まりが出来ていて、白いタキシードに泥が跳ねたけど、そんなことはどうでもよくって。

「……A！」

『わく、』

人様の家なのにお構い無しにドアを開けて、靴を脱ぎ捨てた。
真っ赤になった目にはまだ涙が浮かんでいる。

『……なんで、』

「遅くなってごめん、」

『……今日、』

「後で土下座でもなんでもするからお前は気にすんな」

.