恋の魔法 *２ (ページ43)

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元木先輩とAと三人で歩く。

誰一人喋らない空間は居心地が悪い。

そんな中、Aが口を開いた。

『……自分のこと好きじゃない人と一緒にいるの、疲れちゃったの』

「俺はAのこと、」

『……私、内村先輩の気持ちちょっと分かるな、……』

「颯太の？」

『好きな人の心に、他の人がいるって辛いよ、……だから、湧、湧先輩とは結婚してても上手くは行かなかったと思う、』

お見送りはここまでね、と笑って元木先輩に手を振る。

「Aのこと好きなの嘘じゃなかったよ」

『……うん、私も湧先輩と一緒にいて楽しかったよ、ばいばい湧先輩』

元木先輩が見えなくなるまで後ろ姿を見つめるAを見ていた。

涙ひとつ見せず、笑っているけど。

「……もう元木先輩見えなくなったよ？」

『……もういい？』

Aの頭に手を乗せて少し強引に自分の胸に押し付けた。

鼻をすする音と上擦った声が静かな住宅地に響く。

『ゆ、せ、わたしがんばった？』

「超がんばった、偉い！」

いつだか‘湧先輩の前では絶対に泣かない’と言いながら泣いていたAを思い出した。

TシャツがAの涙で濡れて冷たくなる。

最近買ったばかりだとか、好きなバンドの限定のグッズだったとかはどうでもいいや。

「……俺の前だったら頑張んなくてもいいよ」

本当は泣き虫で弱いAを俺は知ってるから、そこを含めて、……というかAの全部が好きだから。

「……A、実は俺が好きって嘘ついたでしょ？それ、本当ってことにしてよ」

まどろっこしい愛の告白にAは気付いてくれるだろうか。

「おばあちゃんになってからでもいいからさ、俺のこと好きってほんとにいつか思ってくれれば俺はいいから」

『……結星？』

「俺は小さい時からAのこと好きだったよ、高校の時Aの背中を押してしぬほど後悔してるの、」

そうしたらAがこんなに傷付く事がなかった。

元木先輩ともっと早く離れていれば、とっくに幸せになっていたかもしれないのに。

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