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「Aちゃんにこれあげる」
『え？』
「おれお守りとかそういうの信じてないし、」
『湧はそうちゃんにあげたんだから大切に持っておきなよ』
この世に神様だとか、おまじないだとか、魔法だとか、非科学的なものは存在しない。
あったとしても、中途半端な魔法はAちゃんのことも湧のことも、……おれのことも、幸せになんかしてくれなかった。
「Aちゃん、湧と同じ大学行かなくてよかったの？」
『……うん、S大に行きたかったから』
「あのね、おれ、」
『ほんとはS大に行きたい明確な理由なんてなくて、……近いとこが良かったからかな、そうちゃんと離れたくないし』
「おれと離れたくないの？湧と離れるのに？」
『そうちゃんは私の気持ち分かってないね、そうちゃんが思ってるより私はそうちゃんのことが好きなんだよ』
でもそれは、魔法のせいで。ほんとうに好きなのは湧なのに。
『……信用ないなあ、いい加減信じてよ』
精一杯背伸びをしておれの肩に手をついた。
ぎこちなく唇を重ねて、恥ずかしそうに笑うAちゃん。
『……そうちゃんのことが好き』
「……ほんとに？」
『ほんとのほんと！』
いつもおれからで、Aちゃんの方からしてくれることは無かった。
魔法に囚われることを一旦辞めて、Aちゃんのことを信じたい、そう思った。
「っ、……、」
『もう、なんで泣いてるの、』
「だって、」
嬉しくて、幸せで、でもやっぱり苦しい。
この罪悪感とか、苦しみとかから解放される日が来るのだろうか。
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作者名：モモ
x他1人 | 作者ホームページ：https://twitter.com/nininin___2n2n
作成日時：2020年10月10日 10時
