28 ページ28
.
廉は一言も喋らずに
自分のマンションへとあたしを引っ張った。
…昨日の優しい廉とは違う。
怒って…る？
部屋のドアに鍵をかけ、振り向いた廉は
なんとも言えない表情を浮かべていた。
｢ 廉… ｣
｢ なんで昨日言わんかったん？ ｣
低音で話す廉。
だけど、どことなくその声は優しかった。
｢ なんで暴力振るわれてるって言わんかったん？｣
眉を歪ませ、あたしを優しく抱きしめた。
首を振り彼を突き放そうとしたけれど
…無理だった。
彼の力のが強かった。
｢ 暴力っていっても毎日じゃないの。
たまにっていうか、今日が初めてぐらいだから…｣
まだジンジンと痛むあたしのその頬を
彼は手で覆う。
｢ 知ってたら、引き止めたのに。 ｣
真剣な眼差しであたしを見つめる。
�� 大切にしんなら、奪ってやる。 ��
彼が彼方にさっき吐いた言葉。
あれは、あたしを守るための嘘だと思っていた。
｢ 廉…。 ｣
｢ もう俺の気持ち気付いてんやろ？｣
心臓が、ドキリと静かに波打った。
そうかもしれない、と気付く。
何処かで…、気づいていたのかもしれない。
普通の人なら
興味のない人を家にあげないし
そんな人のために自分の立場を犠牲にしない、と。
だって、…おかしいでしょう？
いろいろと。
何も言えなくなってしまったあたしに
廉は無理矢理作った笑顔で微笑んだ。
｢ …ずるい。 ｣
そう呟いた彼を、見てられなかった。
胸がただ痛かった。
見たくなかったから
あたしから彼を抱きしめてしまった。
｢ ごめん…っ。 ｣
深くて暗い底無しの沼へ
足を踏み入れてしまったかのような、
そんな、気分だった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1407人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆい - わあ、、、めっちゃ、面白い、、ですね!!ほんと才能溢れ出てますね！！更新、すっっっっっごい楽しみにしてます！頑張ってください！！ (2016年11月4日 1時) (
レス) id: dc31dcd83f (このIDを非表示/違反報告)
美空(プロフ) - 更新楽しみにしてます〜♪頑張ってください！ (2016年11月2日 17時) (レス) id: f9b1d0fd11 (このIDを非表示/違反報告)
かれん - 小説とっても面白かったです！これからも頑張ってください！応援しています。更新頑張ってください (2016年11月1日 22時) (レス) id: 24cd997fee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シュガー
| 作成日時：2016年10月31日 16時
