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『鍵……、』

「……ん、」







家まで何とか歩くと、2人とも雨でびしょ濡れになっていた。

家の中に入ると、海斗くんが倒れ込んでそれにつられて私も床に座る。
彼の顔は赤く火照っている。


……もしかしたら熱がある?



そう思って彼のおでこに触れようと思ったけど、昨日のことが蘇って動けない。

でもこの冷たく重たい服を彼に着させたまま玄関に放置するのは私の心が許せなかった。






『……お風呂入れてくる。』

「いい、俺がやる。」

『でも体だるいでしょ?
動かないなら……

「違う。」






体を起こすと、濡れた前髪で顔を隠すように俯きながら、ポツポツと話し始めた。




「安心しただけ。
別に、倒れ込んだのも体がダルいからとかそういうのじゃない。」

『本当?』

「……こんなこと自分でしておいて、安心したとか何言ってんだろうね、俺。」





そう言われると、なんて返せばいいか分からない。


無言が続いて2人して俯いていると、こんな時に限って嫌な予感。





『っくしゅん。』

「あ、ごめん。
すぐ風呂入れてくる。」

『え、あ…………』





確かに風呂の位置もよく分からない私が入ってもできることはなかったのか、と今になって思う。

超特急で風呂を入れてきた彼は、Tシャツとズボンを私に渡すと洗面所に押し込んだ。




『ねぇ、私後でもいいよ。』

「俺時間かかるから先入って。」





男で女よりお風呂の時間がかかる人なんているだろうか。

よく分からないが私もさすがに濡れた服を着たままなのは嫌なので、ささっと脱いで浴室に入った。






 

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作者名:菜緒 | 作成日時:2022年1月4日 18時

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