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松倉くんはゲームの約束をしていて連絡したところ、返事が全くなかったらしい。


いつもなら、携帯の電源切ってるんじゃない?なんて軽く返すが、そんなことは出来ない。


連絡がない理由は、きっと私だから。


でもそんなこと松倉くんには言えなくて、
海斗くんの家の近くの駅にいるから、家行ってみるね、とだけ連絡した。


俺大学見てくるわ、と松倉くんから来たのを確認して、昨日来た駅で電車をおりた。








昨日の記憶を頼りに、駅を出る。


あってるのか分からないけど、たしかこっちの信号を渡ったはず。

なかなか変わらない信号にイライラする。
こういう時に限って、変わらないのってなんなの?

はぁ、と深いため息をついてスマホを確認するけど連絡は特にない。
それに時間はどんどん経っている。





信号が変わって歩き出すと目の前を傘無しで歩いている人がいて、思わず注視してしまった。

こんな雨が降ってるのに傘をさしてないとか、風邪引こうとしてるの?

とぼとぼと歩く丸い背中が寂しそうで、傘を貸そうか少し迷う。




『…………ぇ、』




やっぱり傘貸してコンビニで買おう。

そう思って近づいた瞬間、足が止まった。





見覚えのある襟足。

横顔はとても綺麗で、耳にはきらりと光った2連ピアス。

黒い髪から水が滴ってて、肩が震えていた。














『…………』




後ろから、彼の前へ傘を差し出す。




「………………っ、」




大きく震えたため息をつくと、ゆっくりとこっちを向いた。


顔は真っ白で今すぐにでも倒れてしまいそうで、怯えた目でこっちを見る。

少し腕を広げた彼は私の方に倒れかかるようにぎゅっと抱きついてきた。
濡れた肌や服が冷たくて、だんだんと私の服に染みてくる。




大切な人を傷つけることは自分も傷つくことになる。



昨日の嘘だって全部後悔した。

後悔しても何も変わらないのに。










 

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作者名:菜緒 | 作成日時:2022年1月4日 18時

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