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家に帰って、スマホをじっと見つめていた。

夜ご飯の後、1つの通知が入った。
海斗の、体調大丈夫?っていうメッセージ。
別に、大丈夫だよって言えばいいんだけど何故か返信したら負けのような気がして既読さえも付けられない。


女の子と買い物したのは、別にいいの。
でもさ、私に冷たくなったのだって、ある程度の距離置いてるのだって、その子のためなのかなぁとか考えちゃうじゃん。
いつも女の子とあんま話さない海斗が馴れ馴れしく話すなんて……。

てか、あの女!
友達ならあんな目しないでしょ!
あの距離感だって、絶対狙ってる。
でも海斗は鈍感だから分かんないだろうな。



そんな事考えてたら海斗にもイライラしてきて、結局"心配ご無用!"と書かれたスタンプを送った。
すぐに既読がつくわけでもなく、トーク画面を閉じた。


ふと思いつきで窓を開ける。
暗くなった空に、綺麗な月が出ていた。

1年前の夏、綺麗な月をストーリーにあげたら、海斗からその返信で"月が綺麗ですね"って返信が来た。
思わず笑っちゃったけど、あんまり面と向かってそういう言葉を言ってくれない人だと思ったら、なんだか愛おしかった。










かいと月が綺麗ですね




Aあなたと一緒に見るからでしょう








海斗と私が好きな小説の中にある、1場面。
月に照らされた主人公とその恋人が交わす言葉が、まさにこのままだった。

送った後に自分で照れくさくなって消そうかと思ったけど消さずに残してあるのは、ありがとうって返信をしてくれた君のおかげ。

トーク画面を遡って、そんなことを考えていた。






 

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作者名:菜緒 | 作成日時:2022年4月30日 17時

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