クレマチス2【SVT】

41 ページ42

WNサイド


どこか、自分は冷静だなと思う。
みんな何でそんなこと言うんだ、なんで手紙なんて読むんだって思ってるだろうけど、俺はただただ自分が憎い。



AからのSOSに気づけなかったことも、辞めなければいけないほど追い込まれた状況にしてしまったことも。



「ウォヌオッパ、少し前に夜遅く2人でベランダに出ながら話したの覚えてますか。私はあの時間がずっと頭から離れません。


私の為に沢山話してくれたこと。私の為に私を止めてくれたこと。凄く嬉しかった。



オッパは今、自分は何も出来なかったって思ってますか？思ってるなら違うのでその考えやめてください。あんなに細やかにサポートしてくれてたのはオッパしかいません。


作業を何日もほぼ徹夜でしなければならなかった時、私の作業室にドリンクや軽食を補充してくれてたこと。


気分が落ち込んでる時散歩に一緒に行ってくれたこと。


どれだけ心が軽くなったか。どれだけオッパに甘えてしまったことか。



責任感が強くて、周りのことをよく見れて、弟のフォローも兄のサポートにも回れて、凄すぎます。



ウォヌオッパも夜分遅くにベランダに1人で出ないようにしてください。これ約束ね。」




さっきまで冷静にモニターを見ていたはずなのに、急に不安に襲われた。


自分のことに対してでは無くAのことで。


綺麗な景色を見させてもらう代わりに僕達が代償として払っているのは多くの自由なわけで、
Aはここから居なくなったらその自由を手に入れられるのだろうか。


沢山の人の気持ちを動かした人を簡単に手放そうと世間がするわけが無い。きっとAは自由を簡単に手に入れられない。


でも俺たちがそばで守ることも出来ない。



それだけは嫌だ。一緒にデビューした以上、共に人生を歩んでいくと決めた以上、小さくて儚い手を簡単に離してはいけないんだ。



だけどきっともうその手を握れないんだろう。

42→←40

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す