第九十九話 ページ4
まるで獰猛な獣の瞳のような満月が高く高くのぼった夜。こんな夜まで起きていることを咎める人もいない私は誰に気を使う必要もなく、通話の準備をしていた。
伊作が渡してきた連絡先はおそらく彼の携帯電話のもの。きっと出てくれるだろう。
静かな夜にコール音が溶けていく。
「……A？」
『はい、Aです』
ひどく震えて弱々しい声だった。それが私の声か、伊作の声なのか。いやどちらのものでもあったのかもしれない。
「ほんと、何やってるんだよぉ……どれだけ心配したと……！」
『ちょっと落ち着いてくださいよ、もう……！』
落ち着いて、と言っておきながら、私も様々な感情が入り乱れていてとても人のことを気にしている状況ではなかった。
嬉しくて、懐かしくて、感慨深くて。
ここまで感情を乱されたのはいつ以来か。嗚呼でも、まずは言わなければいけないことがある。
『伊作。あの時の手当、ありがとうございました』
「いや、僕は、それしかできなかったたけで……」
『貴方の優しさが変わらずにいたことが、私はひたすら嬉しかったんです。本当に、ありがとう』
そう言うと、電話越しにまた鼻を啜る音が聞こえる。
「お礼を言うのはッ、僕の方で……君の姿に僕がどれだけ勇気付けられたか……！」
『……ええ、私も頑張った甲斐があったというものです』
思わず、ふふと笑い声が溢れる。
「近いうちに、君にちゃんと会いたい。実は僕、留三郎と文次郎と同じ学校に通ってるんだ」
『あら、そうなんですか？それはそれは、さぞ賑やかでしょうねぇ』
賑やかの範疇で収まればいいけど。退屈はしなさそうですね。
「今度、僕らの予定がつく日にちを送るから、君の休みと重なる時に会いたいな」
『それはいいですね、今から楽しみで眠れないかもしれません。……あの二人は元気にしてますか？』
「はは、有り余ってるくらいだよ。君の体育祭を見てる時なんか、２人揃って大盛り上がり！」
容易に想像がつく。くすくすと笑う私につられたのか、伊作の笑い声も聞こえてきた。嗚呼、楽しい。
「それじゃあ、夜も遅いからまたね」
『はい、名残惜しいですが、また』
通話が切られたことを意味する液晶を眺めた。
きっと今日は、良い夢が見られるだろう。
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六時の虹(プロフ) - えだまめさん» 一気読みありがとうございます。本当に遅筆で申し訳ないです。更新を止めるつもりはないので、これからもよろしくお願いします！ (5月2日 21時) (
レス) id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ(プロフ) - めっっっちゃくちゃ面白かったです！！！！一気読みしちゃいました…！！！！更新頑張ってください応援してます…！！！！！ (4月26日 18時) (レス) id: cf2c26d9bd (このIDを非表示/違反報告)
六時の虹(プロフ) - かすかすさん» 寛大な言葉に感激してます……。更新は書き溜めながら途切れないようにしていくつもりなので、よければ温かく見守ってください……！ (3月24日 4時) (レス) id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
かすかす(プロフ) - 久しぶりの更新...！ありがとうございまふ！！！この作品大好きなので、六時の虹様のペースでいいので、どうか更新をお願いします......！頑張ってください...！ (3月21日 23時) (レス) @page18 id: 215a8e1465 (このIDを非表示/違反報告)
マジモンの名無し(プロフ) - 六時の虹さん» おふ、、、久々の更新だあ 好きです。もちろん六時の虹様のタイミングでよろしいんですよ これからもファイトです！ (1月22日 17時) (レス) id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：六時の虹 | 作成日時：2023年10月15日 19時
