第百九話 ページ15
『(ひい、ふう、み……)』
頭の中で歩数をカウントしながら、全く同じ歩幅で走る。今はおおよその広さと、端から端までの移動にかかる時間を計っていた。ついでに脳内にこの場の地図を高低差合わせてインプットしていく。早い話がマッピングだ。
本当ならば実技テストの会場に選ばれるであろう全ての訓練場を確認したい所だが、そんな時間はない。精々一日に一会場。筆記の方の勉強も怠ってはいけないので、実際はもっと余裕がない。なので、私の個性上この会場に選ばれたら嫌だな、というランキングをつけて上から確かめていくことにした。明日明後日は市街地ゾーンなどの人工物に囲まれた場所を確かめていくつもりだ。
さて、大体の面積はわかった。あとは……
『一番全体を見渡せるところが知りたいですね……』
ロボにしろ他の試験形態があるにしろ、そういう場所を把握しているに越したことはない。個性を使いながら軽い足取りで跳び回る。個性の訓練にもなるので丁度いい。おそらくここで私が行動している様子はカメラか何かで録画されているだろう。適当な建前でここを借りている以上、それらしい行動もとっておかないと。それに、今できる実習への対策としてはこれ以上思いつかない。
妥協はしたくない。全てが万全の状態で挑みたい。出来る努力は全部して当たり前なのだから。
『(一番全体を見渡せるのはここでしょうか)』
一際高い位置は何ヶ所かあるが、その中でも建物の位置や距離感を一番掴みやすい場所は此処だった。工事現場で見かけるクレーン車が近くにある。見晴らしの良さはダントツだろう。
『……いい天気……』
高所にいるからだろうか。少し強い風が暖かい日差しと運動で火照った身体を程よく冷ましてくれる。
燦々と太陽が輝く雲一つない空は美しく見えるけれど、前世の様に煌めく星々が見えないことを私は知っている。道具も環境も何もかも、今の方が良いに決まっている。だって平和がある。これより尊いものはない。それでも、自然は昔の方が好きだった。
『……考えても仕方がないですね』
不毛な思考を回してしまった。今は一分一秒も惜しいのに。
場所を移すために、また降りる。こんなことの繰り返しを続けながら、完全下校までの時間を過ごしたのだった。
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六時の虹(プロフ) - えだまめさん» 一気読みありがとうございます。本当に遅筆で申し訳ないです。更新を止めるつもりはないので、これからもよろしくお願いします！ (5月2日 21時) (
レス) id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ(プロフ) - めっっっちゃくちゃ面白かったです！！！！一気読みしちゃいました…！！！！更新頑張ってください応援してます…！！！！！ (4月26日 18時) (レス) id: cf2c26d9bd (このIDを非表示/違反報告)
六時の虹(プロフ) - かすかすさん» 寛大な言葉に感激してます……。更新は書き溜めながら途切れないようにしていくつもりなので、よければ温かく見守ってください……！ (3月24日 4時) (レス) id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
かすかす(プロフ) - 久しぶりの更新...！ありがとうございまふ！！！この作品大好きなので、六時の虹様のペースでいいので、どうか更新をお願いします......！頑張ってください...！ (3月21日 23時) (レス) @page18 id: 215a8e1465 (このIDを非表示/違反報告)
マジモンの名無し(プロフ) - 六時の虹さん» おふ、、、久々の更新だあ 好きです。もちろん六時の虹様のタイミングでよろしいんですよ これからもファイトです！ (1月22日 17時) (レス) id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：六時の虹 | 作成日時：2023年10月15日 19時
