第九十六話 ページ1
誰かの話し声が聞こえた。普段ここまで深く寝入ることはないから、気配で目が覚めなかったことに内心驚く。ぼやけた視界の奥で、初めて会った時よりも幾分か柔らかくなったオッドアイが私のことを覗き込んでいた。
ここはどこです、今まで私は何を……
「若藤、起きたか！」
『……轟、くん？』
「待ってろ、ナースコールするから」
未だぼんやりとする頭で、彼の挙動を眺める。段々と意識が覚醒してきて、自分の最後の記憶もありありと蘇る。
傷と失血でふらふらだったところを、ヒーロー殺しの殺気に充てられてぶっ倒れたんだった。
『(不甲斐ない、というか鍛錬が足りてない……)』
自責の念が押し寄せる。
そんな私を他所に彼が呼んだお医者様と看護師さんに連れられて、怒涛の勢いで精密検査を受ける。結果、どこも異常なし。ちなみに、なんと丸一日眠っていたらしい。いくらなんでも寝過ぎでは？
『(懐かしい声を、聞いた気が……)』
涙が出そうになる程優しい声だった。夢の中での朧げなものだから、都合のいい記憶の再生の可能性もあるけれど。
病室に連れ戻される道中でそんなことを考えていた。病室には飯田くんと緑谷くん、そして轟くんがいる。轟くんだけはほとんど無傷なため、入院はしていない。わざわざ私たちのお見舞いに来てくれたらしかった。
「……！若藤さん、大丈夫だった？」
『ええ、ありがとうございます。傷は痕にはなりますが、後遺症の類は残らないそうです』
「痕……悪りぃ、俺がちゃんと避けてれば……」
『暗くなるのでそういう話はやめましょう』
起きてからすぐ検査だったせいで、喉が渇いた。私のベッドのそばにおいてあった未開封の水を、許可をもらってから飲む。私がいなかった間の話によると、エンデヴァーの功績になることで私たちはお咎めなしで済むらしい。これで退学とか笑えないので、それは本当に良かった。
話を聞きながら水を口に含んでいた時に、轟くんが爆弾を投下した。
「……責任は取る！」
『ン゛ッ』
完全に不意打ちを喰らったせいで咽せた。
「と、轟くん……！？」
「俺のせいで怪我させて、痕まで残しちまった。お詫びしないと気が済まねぇ」
「いや、それなら僕はどうやって君たちに謝れば……？」
「飯田くんまで……」
慌てる緑谷くん、焦る飯田くん、暴走し続ける轟くん。それを尻目に、気管に入った水で咳き込む私。カオス、完全にカオスです。
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六時の虹(プロフ) - えだまめさん» 一気読みありがとうございます。本当に遅筆で申し訳ないです。更新を止めるつもりはないので、これからもよろしくお願いします！ (5月2日 21時) (
レス) id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ(プロフ) - めっっっちゃくちゃ面白かったです！！！！一気読みしちゃいました…！！！！更新頑張ってください応援してます…！！！！！ (4月26日 18時) (レス) id: cf2c26d9bd (このIDを非表示/違反報告)
六時の虹(プロフ) - かすかすさん» 寛大な言葉に感激してます……。更新は書き溜めながら途切れないようにしていくつもりなので、よければ温かく見守ってください……！ (3月24日 4時) (レス) id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
かすかす(プロフ) - 久しぶりの更新...！ありがとうございまふ！！！この作品大好きなので、六時の虹様のペースでいいので、どうか更新をお願いします......！頑張ってください...！ (3月21日 23時) (レス) @page18 id: 215a8e1465 (このIDを非表示/違反報告)
マジモンの名無し(プロフ) - 六時の虹さん» おふ、、、久々の更新だあ 好きです。もちろん六時の虹様のタイミングでよろしいんですよ これからもファイトです！ (1月22日 17時) (レス) id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：六時の虹 | 作成日時：2023年10月15日 19時
