第七十話 ページ24
No side
大通りを満たす喧騒と日差しから切り離された様な路地裏で、一人の男が死に物狂いで走っていた。目は血走り、息は絶え絶えで、何も知らない人間が見れば何をそんなに走る必要があるのかと問いかけることだろう。
この恐怖は当事者にしかわからないのだ。
「(何だアイツら、何なんだ！？どこまでも追いかけてきやがる！！)」
視界の悪い路地裏をものともせず、しなやかな身のこなしで追いかける少年が二人。哀れなことに、男の逃げ惑う様は完全に被食者であった。
「(ああ、見えた！あの通りに出れば逃げ切れる！あそこは道も入り組んで人も多い！)」
彼が希望を見出したまさにその瞬間、黒い影が頭上から舞い降りる。
『こんにちは、ご機嫌いかがです？ひったくりさん』
まるで登校中に同級生に出会ったかの様な声の抑揚と共に現れたその影に男は腰を抜かす。
顔は逆光になって見えない。怒っているのか、笑っているのか、憐んでいるのか。
双眼が男の脳裏に焼き付ける様に、爛々と光り輝いている。顔が見えずとも、自分が今見咎められていると強く感じるその瞳。
『さて、お縄についてもらいましょう、かっ！！』
一歩、また一歩とこちらに近づいて来る様子をただ見ているしかない。結局、強く顎を蹴り上げられて、男は気を失った。
ーーー
ーー
ー
「いやー、楽しかったなぁ」
「先輩と遊んだのは久々だったな」
のちに駆け付けた警察官による事情聴取を済ませて、二人は夕暮れを背に歩いていた。あれだけの疾走の後にも関わらず、疲れを見せる様子はない。
「先輩が先輩のままでよかった」
噛み締める様につぶやいた兵助の台詞を、勘右衛門はあえて拾わなかった。
声を、顔を、忘れてしまったのではないかと思っていた矢先、飛び込んできたあの人の戦う姿。
強く、凛々しく、逞しく。ただ前を向く、止まってなどくれない厳しく優しい背中を追いかけた五年間を、自分は昔から大切に抱えていた。忘れてなどいなかった。変わってなどいなかった。あの人はあの人のままだった。
「今度は全員揃って会いたいな。昔みたいにご飯食べられるといいなぁ。三郎も八左ヱ門も雷蔵も、先輩も後輩もみんなでさ」
「うん！その時は俺が豆腐料理を出すよ！」
「そ、それはほどほどにしてくれよ……？」
すっかり伸びた自分たちの影を踏みながら、二人は意気揚々と家路についていた。
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六時の虹(プロフ) - 梅干しさん» コメントありがとうございます！伊作の他にもちゃんと忍たまキャラ出すので、これからもこの小説をよろしくお願いします！ (10月16日 8時) (
レス) id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
六時の虹(プロフ) - ルククさん» ありがとうございます！伊作はここで出すと決めてたので、そういう反応はめっちゃ嬉しいです！ (10月16日 8時) (レス) id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
梅干し - 伊作先輩だぁぁぁぁ！！！！めっちゃうれしぃぃぃ、ほんとこの後の展開気になる！いつも素敵な作品ありがとうございます！ (10月9日 23時) (レス) id: 3545da5797 (このIDを非表示/違反報告)
ルクク(プロフ) - うわぁぁ！伊作が出てきたぁぁぁぁぁあ！！！！めっちゃくっちゃ気になります！楽しみです！頑張ってください！ (10月9日 8時) (レス) id: 9d9335310e (このIDを非表示/違反報告)
六時の虹(プロフ) - みずみずさん» ありがとうございます！更新は途切れがちですが、必ず完結させますので、これからもよろしくおねがいします！夜更かしにはお気をつけて！ (10月5日 15時) (レス) id: 6ed7129851 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：六時の虹 | 作成日時：2023年1月20日 22時
