い ち に ち 彼 氏 ＿＿ 好きになっちゃダメな人。

…手料理。 ページ9

涼「着いた。先行ってて」


「うん」


鍵を貰って、先に山田さんの家に行く。




今からは
マネージャーとしてじゃなくて、彼女としてこの家に入るんだ。



「お邪魔しまーす…」

小さい声で呟いて、
リビングへと向かう。



山田さんの家に来るのは初めてではないけれど

凄く緊張する。


「関係性って…こんなにも大事なんだ…」


彼の家は相変わらずで。


カーテンは閉めてあるし
部屋には埃一つない。


台本もきちんと片付けてあって、
壁一面の本棚には、
本やCDだけじゃなく、

メンバーとの写真も飾られていた。



涼「なーにじっくり見てんの？」


「メンバー想いだなって」


涼「俺だけじゃないよ。
みんなこんなもんだって」


ツンデレ…なのかな。
メンバーが大好きなのバレバレなのにね。


と、その時。




グゥ〜…

「へ」

涼「……」

彼のお腹から聞こえた、
低い音。


そう言えばもう、13時過ぎだった。


「料理、作るよ」


涼「マジ？やった！」


歯を見せて喜ぶ彼が可愛くて、

心が跳ねる。



「何が良い？」


涼「オムライス…？」


「何で疑問形？ 笑」


涼「大ちゃんと一緒にしたくない…けど食べたい」


「なにそれ 笑」



クスクスと笑いが漏れる。


「ほんとは大貴くんのこと好きなくせに 笑」



私がそう言うと、

山田さんは眉をピクッとさせて


涼「大貴くん…？」


「うん。大貴くん」



涼「今までメンバーの事、苗字にさん付けだったよね」


「今もそうだよ。

でも大貴くんが、いい加減タメにして、って言うから」



ふぅん、と

何だか納得していない様子の山田さん。



涼「知念の事は何て呼んでる？」

「え？知念さん、だよ」


涼「裕翔は？」

「中島さん」


涼「ヒカは？」

「八乙女さん」


涼「薮くん」

「薮さん」


涼「雄也」

「高木さん」


涼「伊野ちゃん」

「伊野尾さん」


涼「圭人」

「岡本さん」




涼「…俺は？」

「山田さん」



涼「………」

「………」



…何か変なこと言ったかな。

顔が凄いムスッとしてる山田さん。



涼「大ちゃんは大貴なのに

俺は山田さん、なの？」



「え」


涼「俺の事も、名前で呼べよ」

「う、うん」



涼「呼んでみて」

「へ」


涼「早く！」



うぅ。


「りょ、涼介くん…」


涼「涼介」

「え？」



涼「呼び捨てじゃなきゃ、ヤダ」


「り、涼介…？」



私が呼ぶと、

山…涼介は、



涼「ん」

嬉しそうに笑った。

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