Lemon 44 ページ44
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「...いきてた」
目を覚まして、そこが病室だと分かった瞬間
無意識にそう口にしていて。
人工呼吸器がついてないことからも、
"あぁ、まだ生きてていいんだ"なんて思ってしまった。
「...Aちゃん」
「......ひらつかくん」
突然、自分以外の声が聞こえてきて
声のするほうを見れば今回は寝ずに
椅子に座っている平塚くんがいた。
...あぁ、きっとあの時ナースコールを
押してくれたのは平塚くんだったんだ。
「...ごめんね、あんなとこ見せて」
一言、平塚くんに謝れば
平塚くんは私の側まで来て、
"ありがとうのほうが聞きたいんだけど"と
私のおでこにデコピンをしてきた。
「...今日、父さんから話があるって」
「平塚くん、聞いたの？」
「聞いてるわけないでしょ、俺ただの彼氏だもん」
「...そうだよね」
でも、ママもパパも来るわけないし
一人で話聞かなきゃいけないんだ。
...退院、できるのかな。
今回退院できなくても、治療したら
すぐに退院できる？
...このままずっと入院なんてこと、ないよね？
「...俺、明日一旦家帰るけど午後また来るから」
「...」
「だから、少しの間だけ耐えて？」
私の頭をそっと撫でながら、
そう話す平塚くんはすごく優しくて。
...でも、少しだけその優しさが苦しかった。
「......ね、平塚くん」
「ん？」
「...むりして、来なくていいんだよ」
優しい平塚くんのことだから、
きっと自分のやりたいことを抑えて
私のところに来ようとしている気がして。
そんなことを口にすれば平塚くんは、
"なーに言ってんの"と目をクシャッとさせて、
私に笑顔を向けてきた。
「俺、来たくなかったら来ないから」
「...でも、」
「少しだけ家に寝に帰るだけだから。さすがに椅子で寝ると体カチコチに硬くなっちゃうの俺」
"だから変なこと考えないで、俺に甘えて？"
平塚くんはそう言うと、
私の目の上に優しく手を乗せて
"おやすみ、Aちゃん"と呟いた。
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作者名：Tsumu. | 作成日時：2021年1月20日 19時
