Lemon 36 ページ36
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勢いのまま、家から飛び出して
ダメなことは分かってるのに走って、
気が付けば平塚くん家のマンションまで来ていた。
「...っ...はぁ...っ...」
家からここまで走ってきたんだから、
胸が痛くなるのは分かりきっていたことで。
...あぁ、本当に私ってバカだなぁなんて
こんな状況で考えてしまう私は、
正真正銘のバカなんだと思う。
「Aちゃん？」
胸を押さえてしゃがみこんでいたら、
私を呼ぶ声が聞こえてきて。
「いま救急車呼ぶから」
どうしていつも平塚くんは、
こういう時に現れるのかな。
そんなことを考えながらも、
胸の痛みが治まることはなくて。
「すぐ来るからね」
きっと聞きたいことなんてたくさんあるはずなのに
平塚くんは何も聞かずに、救急車が来るまで
ずっと私のそばにいてくれた。
.
「......ひらつかくん」
目を覚ますと、一定の機械音が
病室に響いていて。
ふと横を見れば、平塚くんが椅子に座って
壁に寄りかかるように眠っていた。
「あ、起きた？胸の痛みはどうかな？」
病室の扉が開くと、
中に入ってきたのは平塚先生で。
平塚先生はチラッと平塚くんを見ると、
"どうしてもそばに居たいって言うからさ"
なんて優しい目をして話した。
「...痛みは、もうないです」
「ならよかった。...Aちゃん、あんまり数値が良くなくてね？詳しい検査結果が出たらまた話すけど少しだけ入院期間が延びるかもしれない」
「...大丈夫です、自分が悪いので」
数値が良くないのは、きっと最近の私の行動のせい。
あんな頻繁に走ったりして、心臓に負担をかけてたら
私の心臓がそれに耐えられるはずがない。
「...まだ時間も時間だし、ゆっくり休んでね」
平塚先生は一言、それだけ告げると
静かに病室から出て行った。
「...3時...」
いま何時なのか気になって時計を見れば、
ちょうど3時を過ぎたところで。
...私は一度だけ平塚くんを見てから、目を閉じた。
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作者名：Tsumu. | 作成日時：2021年1月20日 19時
