Lemon 19 ページ19
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「あらA。...なに？それ」
家に帰ると、珍しくママがいて。
洗濯物を畳んでいたりしているのを見ると、
今日はもう外に出ないのかなって。
「...浴衣」
ママの質問に素直に答えれば、
ママは黙って私に近づくと紙袋を取った。
「秀生くんと行く時は浴衣なんて着てなかったよね？...好きな人でもできたの？」
「...ママには関係ないでしょ」
ママの手から無理やり紙袋を取って、
リビングを出ようとしたのに、
それはママの発した一言で出来なかった。
「どうせすぐに死ぬアンタに恋なんてする資格ないのよ」
「...」
「アンタなんかに好かれた相手が可哀想ね」
...あれ、ママってこんなにトゲあった？
前までこんなこと言ってこなかったよね？
恋することがそんなにいけないの？
「...じゃあママ、部屋にいるから」
ママは好き勝手私に言いたいことを言うと、
私の横を通り過ぎて階段を上がっていった。
「......簡単に...しぬとか、言わないでよっ...」
私の小さな声がママに届くことはなくて。
この静かな家からは、時計の針の音と
寝室の扉が閉まる音しかしなかった。
.
"アンタなんかに好かれた相手が可哀想ね"
部屋に戻ってから、ベッドに寝転ぶと
さっきママに言われた言葉がぐるぐると
頭の中を廻っていて。
...私に好かれた平塚くんは可哀想？
私には、恋する資格なんてないの？
そもそも、恋することに資格なんて必要？
「...っ...」
気付いたら、私の目からは涙が溢れていて
あっという間に枕にはシミができていた。
「...っ...はぁっ...」
平塚くんに会いたい。
平塚くんに会って、安心したい。
...でも、平塚くんは私なんかに好かれてるって
知ったら嫌がるのかな。
...平塚くんが私と仲良くしてくれるのは、
私の病気のことを知らないから？
やっぱり周りと違う子とは関わりたくない？
「...っ...ひらつかくん...おしえてっ...」
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作者名：Tsumu. | 作成日時：2021年1月20日 19時
