君の隣。 (ページ26)

今日:30 hit、昨日:10 hit、合計:159,408 hit

next to you 26 ページ26

.

「ねぇ湧にお姫様抱っこされたんだって？」

「...誰から聞いたの」

「そんなの教えてくるの一人しかいないじゃん」

体育祭の練習が終わった後、

お兄ちゃんが保健室まで迎えに来て、

一緒に帰ってると突然そんなことを言ってきた。

「颯ちゃん？」

「せいかーい。うっちー、自分のクラスのところでめっちゃキョロキョロしてんの。誰探してんのかと思ったら、俺のこと探してたんだって」

私には、お兄ちゃんに会ったらって言ってたのに

颯ちゃんってそういうところあるよね。

「...まぁ今日はゆっくり休みな？最近いろいろ考え事してたんだろうし、もうAの脳内限界だったんだよ」

「脳内が限界って響き、なんかやばそう」

「冗談言えるなら大丈夫だね、心配して損した」

そうは言っても、私に負担がかからないように

ゆっくり歩いてくれるお兄ちゃんは優しい。

...湧ちゃんにお礼、言わないとな。

颯ちゃんにも改めてお礼言わないとだし。

「...佳奈ちゃん、あれからどんな感じ？」

お兄ちゃんからそう言われて、

湧ちゃんが言った一言を思い出した。

「...分かんない」

「え？」

「...湧ちゃんはね、私に佳奈ちゃんと友達になってって言わなくなったの。でも私が一人でいると、佳奈ちゃんが近寄ってくるようになった」

「...嫌だ？」

「んー...嫌か嫌じゃないかって聞かれたら嫌じゃないよ。私別に佳奈ちゃんのこと嫌いじゃないし。...でも佳奈ちゃんから湧ちゃんの名前が出ると、どんな顔したらいいのか分かんなくなる」

湧ちゃんのあの一言と、

今日のあの感じからして佳奈ちゃんが

独占欲強くないのは分かった。

どうしてそんな噂が立ったのかは気になるけど。

「普段通りでいいんじゃない？」

「え？」

「深く考えないで、普段のAでいればいいよ」

「でもそれじゃ佳奈ちゃんにバレる可能性あるじゃん」

「いいじゃん、バレたらバレたで。いま、佳奈ちゃんが"湧の彼女"ならAは"湧の幼馴染み"なわけ。それは事実だから変えられない」

「うん」

「でも何かしらアクションを起こしたら、Aが"湧の彼女"になるかもしれない。分かんないけどね？」

「でも湧ちゃんは佳奈ちゃんが好きじゃん」

「元々はAのことが好きだったんだから、どうなるかなんて分かんないよ」

そう話すお兄ちゃんの方を見れば、

お兄ちゃんは少し笑って"なるようになるよ"と

私の頭を撫でた。

.