君の隣。 (ページ16)

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「Aの話しちゃいけないわけ？」

「は？」

「彼女に、幼馴染みの話しちゃいけないなんて誰が決めた？」

「そういうこと言ってるんじゃなくて...！」

彼女と幼馴染み。

湧ちゃんの口から出たその言葉は、

私の心にグサッと刺さった。

「俺が付き合ったのが佳奈じゃなかったら、そこまで嫌がらないんだろ？佳奈だから嫌なんじゃねーの？」

「私は...っ」

私は、佳奈ちゃんのことが嫌いなわけじゃないよ。

愛未とか、涼花ちゃんから聞いた話だって

全部信じてるわけじゃない。

私が佳奈ちゃんと友達になるのを拒んでるのは、

佳奈ちゃんが"湧ちゃんの彼女"だからだよ。

...それともなに？

湧ちゃんは、私が湧ちゃんを好きだってこと

とっくの昔に忘れちゃった？

それか、湧ちゃんが佳奈ちゃんと付き合った時点で

もう湧ちゃんのこと諦めたと思った？

......昔からずっと好きな人をそんな簡単に

諦められるわけないじゃん。

「Aもどうせ佳奈の噂話信じてんだろ」

「違う...！」

「Aもアイツらと同じじゃん」

湧ちゃんの言う"アイツら"とは、

きっと佳奈ちゃんの噂話を勝手に信じて、

近付こうとしないクラスメイトのことで。

「Aがそんな奴だと思わなかった」

私の話なんて聞こうとしないで、

自分の考えばっかり押し付けてきて、

挙句口を開けば佳奈ちゃんの名前しか出してこない

湧ちゃんに腹が立って、つい言ってしまった。

「彼女のことしか見えてない湧ちゃんにそんなこと言われる筋合いないんだけど」

私がそう言った瞬間、湧ちゃんの目に

涙が浮かんだのが見えた。

『私、湧ちゃんのことしか好きじゃないよ』

『...俺も。Aのことしか好きじゃない』

その瞬間、脳裏に浮かんだのは中3の時の会話で。

どうしてあの時、"付き合おう"って言わなかったのかな。

あの時湧ちゃんと付き合ってたら、湧ちゃんの隣は

今でも私の場所だったかもしれないのに。

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