君の隣。 (ページ1)

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『湧ちゃんのお隣がいいの！』

『おれの隣はAって決まってるから泣くなって！』

小学生の頃、修学旅行のバスの席決めの前日に

湧ちゃんと隣の席になれるか不安で泣いてた私に

しっかりとした口調でそう言った湧ちゃんは、

次の日本当に私が隣になるようにしてくれていた。

『湧ちゃんの隣は、私の場所だね』

『当たり前だろ』

そうやって言ってくれてたはずなのに、

いつから湧ちゃんの隣は私の場所じゃなくなったの？

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「おはよー」

《Aちゃんおはよう》

《おはよー》

朝、教室に入って適当にクラスメイトに

挨拶すればみんな返してくれて、

自分の席に行くと親友の愛未が座っていた。

「おはよ、A」

「おはよ、とりあえず退いて」

「冷たい、朝だしもっと優しくしてよ」

文句を言いつつも、素直に退いてくれる

愛未はいい子だと思う。

ていうか、私の前の席が愛未の席だから

別に私の席に座ってる必要はないのよ。

「...元木、朝から佳奈ちゃんとイチャついてたよ」

寝坊して朝ご飯を食べてくる時間がなかったから

急いでコンビニで買ってきた野菜ジュースを飲もうと

ストローを挿せば、愛未はそんなことを言ってきた。

「いいんじゃない？付き合ってるんだし」

どの口が、って自分で言ってて思うけど

平気な顔をしてないと泣きそうになるから。

「...私はAの方がお似合いだと思う」

「でも湧ちゃんが選んだのは佳奈ちゃんだよ」

愛未があんなことを言うのは、

別に私に対しての嫌味とかじゃなくて

私の恋を応援してるからこその言葉。

それを分かってるから愛未の言った言葉で

傷ついたりはしないけど、自分が言う言葉は

見事に全部グサグサ心に刺さってきて。

「なんで元木は佳奈ちゃんを選んだのかなぁ」

愛未とは小学生の頃からの仲だから、

昔の私と湧ちゃんの関係性も知っている。

「元木の隣は、Aだけだと思ってたのに」

愛未がそう呟いた瞬間、笑顔の湧ちゃんと

佳奈ちゃんが前の教室の扉から入ってきて、

一瞬だけ湧ちゃんと目が合ってしまった。

「ねぇ愛未、生物の課題写させて」

だけど湧ちゃんに目を逸らされるのが怖くて、

先に目を逸らしたのは私だった。

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