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――ERカー、オペ室
オペ台には冬木の全身管理の下、外国人らしき女性が横たわっている。その腹部はだんだんと腫れてきているように見えた。
「喜多見チーフ!音羽先生!」
比奈がマイクに向かって呼びかけるが、2人の返事はいくら待っても来ない。こうしている間にも、患者の血圧は下がり続ける。先ほど屋形船がさらに大炎上しているという情報も入ってきていた。
比奈は唇を湿らせる。
「もう待っている時間はありません。今から緊急開腹手術を始めます」
今、この患者を救えるのは
私しかいない――……!
***
『搬送終了しました。
今回の出動、軽傷者78名、重傷者19名、
死者は……
ゼロです!』
喜多見が顔をほころばせる。しかし、
「喜多見さん!」
目の前の隊長には頭が上がらない。毛布をまき直しながら、すみませんと言うが、笑みはそのままだ。
「あんた達もだ!」喜多見の隣で同じように毛布にくるまっている2人にもその叱責が飛ぶ。「音羽さんまで無謀に川に飛び込むとは思わなかった!」
……――「小日向先生!」
あのとき、どちらが早かったか、
2人のドクターは、彼女が沈んでいった川に飛び込んだ。
幸い小日向もすぐに水面に顔を出し、喜多見と音羽に手を引かれながらレスキューのボートに引き上げられた。
千住の説教は延々と続いている。
「喜多見チーフ!音羽先生!」
「比奈先生!みんなも……」
すべての処置を終えたMERのメンバーが、毛布にくるまれたドクターたちを見て駆けつけてくる。
「……え?音羽先生まで川に?!」
喜多見から、何度も炎の船上の中に入って傷病者を治療していた小日向に酸素投与の指示を受け、その準備しながら千住に事情を聞いていた夏梅が驚きの声を上げる。他のメンバーも同時に音羽を見た。
「……配属前のMERの医師に死なれたら、私の統括官としての査定に響いて困るんですよ」
全員音羽のそのツンデレににやけが止まらない。
「ん?」
音羽の言葉に違和感を感じた徳丸の口から思わず声が漏れる。
「配属前って……?」
「私、正式運用が決まったMERに新しく配属されることになった、
医師の小日向Aといいます」
酸素マスクを外してそう言った彼女の顔には、今日2度目の笑顔が浮かんでいた。
***
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わさび醤油(プロフ) - 滴さん» 貴重なご意見ありがとうございます。読みにくくて申し訳ないです( ; ; ) 1ページに入れたい内容が多くて泣く泣く行間を詰めたり文章を削ったりしていて限界なんです(泣)初小説なのでご愛嬌ということで温かい目で見ていただければと思います... (5月3日 16時) (レス) @page8 id: 3684b727db (このIDを非表示/違反報告)
滴 - こんばんは(*^^*) はじめまして。 いきなりすみません。。。 物語読んでいて思ったのですが。。。 行間隔をあけたほうが良いのではないんでしょうか? 行間隔が詰まっていると読みにくいので。。。 (4月30日 23時) (レス) @page5 id: 361e8a8309 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - すずもりさん» 返信遅くなってすみません💦コメントありがとうございます!月島さんかっこいいですよね。もう少しで完結ですが最後まで頑張りますのでよろしくお願いします! (2021年10月31日 9時) (レス) id: bd4ab21637 (このIDを非表示/違反報告)
すずもり(プロフ) - 月島さん好きなのでありがとうございます♪(笑)更新楽しみにしてます❣️ (2021年10月17日 20時) (レス) @page48 id: 850617dc48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わさび醤油 | 作成日時:2021年10月5日 19時