すべての闘う人へ【TOKYO MER２】

#05 ページ22

「腹腔内の出血多いですね」
小日向は手のひらサイズのエコーを操りながら呟いた。


ERカーではトラック運転手のオペが始まろうとしている。


「私は執刀禁止されています。どうしますか、比奈先生？」
「……大動脈閉鎖バルーンで大動脈完全閉鎖します。そのあと開腹して腹腔内の出血箇所を縫合します」

伏せていた目を上げると、小日向と目が合った。唾を飲み込む。




「私が、執刀します」




小日向が比奈の目を見ながら大きく頷いた。


「お願いします」







大動脈に入れたバルーンが膨らむと、血圧が一気に跳ね上がった。すぐ開腹に移る。メスを入れた瞬間、腹部から血があふれ出た。吸引管だけでは間に合わない。
「直接手ですくって！」
「肝臓損傷ひどいです！……脾臓からの出血もあります！パッキングします、タオルください！」
ミンが2人にタオルを渡していく。
「主に肝臓からの出血ですね、先にこっち止血しましょう」
「はい。プリングルします、サテンスキーください」
肝臓の出血が止まった。
「大動脈閉鎖バルーンの閉鎖、解除してください」
「解除しました」
「血圧下がります」
冬木がモニターを見ながら報告する。
「輸血不足ですね、レベル1で大量輸血してください。キャッチアップしてから再開しましょう」
「はい」
比奈と小日向は一旦手を止めた。



比奈は自分の技術量が格段に上がったような感覚に陥っていた。小日向のサポートがいかに執刀医の執刀スピードを上げているかがわかる。オペが始まる前までの不安は嘘のように消えていた。



「輸血4単位入りました。収縮期血圧も100超えました」
冬木の声で、気を引き締める。
「始めましょう」

小日向の合図で再びオペが再開された。



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