lease ページ27
「おら、タオル持ってきたからさっさと拭け」
「ありがとう、ございます」
好きだと自覚してから彼を変に意識してしまって、妙に言葉がたどたどしくなってしまった。
頭に被せられたバスタオルで水を拭いながら、同じように拭く不機嫌そうな三途さんを何となく見つめる。
綺麗好きな彼にとって玄関や床を濡らすのは不本意なのだろう。いつになく曇った顔をしていた。
「……次はもうこんな真似すんなよ」
「そうですね……すみません」
「転んで怪我でもしたらどうすんだよ」
吐き捨てられたような言葉が私を心配するものだったことに驚いて、思わず目を見開いたが、その視線が交わることはなく。
三途さんは淡々とタオルで身体を拭っていた。
そんな彼の様子をぼんやりと見つめている内に、自然と言葉が口から転び出ていた。
「三途さんは……私のこと、好きなんですか？」
時間が、止まったかのように感じられた。
三途さんはぴたりと動きを止めて、顔を上げる。
長い睫毛の下の瞳が、私の瞳を飲み込まんと見据えられる。
ふと、昨日の三途さんとの出来事を思い出す。
あの時の彼は正気ではなかったのかもしれないが、それでも彼の口からはっきりと「愛している」と伝えられた。
でも、彼が愛しているのは以前の私なのではないか？
こんなつい最近まで、冷たく当たっていた女に成り果てた恋人になど、きっと愛想を尽かしているのではないか？
思えば、彼と共に過ごすようになって暫く経つが、彼は私にあまり干渉してこない。
記憶を失くして、三途さんと暮らすようになってからの私は、働く事もなかったし、三途さんがいる時は料理も作ってもらっていたし、欲しいものも彼は何でも買ってくれていた。
それは、まるで。
私が彼にじわじわと、依存していっているようで———
そんな思考に至りかけた時、彼は静かに私の方へ歩み寄り、私の顎に手を添えたかと思うと、そっと口付けを落とした。
「———」
「……嫌いならこんな事しねぇよ」
呆気に取られたまま脳がものすごいスピードで出来事を演算し終わると同時、私は顔から火を噴いた。
「なっ……」
「へぇ。嫌がんねぇのな」
出会った当初はあんなに拒絶してきたのにな、と揶揄うように言い残して、彼はまた別のタオルを私の顔に投げつけた。
「記憶を失くそうがどうなろうが、俺はお前のことが好きだ、A」
遮られた視界の中、彼の言葉だけが私の耳朶を震わせた。
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ぱーぷる姫(プロフ) - こういうの普段は読まないですけど、タイトルに惹かれました。読んで正解でした。鳥肌です。ありがとうございました (9月30日 18時) (
レス) @page43 id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
いちご丸 - 闇深いけど好きです笑 (9月2日 0時) (レス) @page44 id: 7e45dba670 (このIDを非表示/違反報告)
海 - やばい、ちょー好き、ストーカー系好きなんですよね笑 (6月4日 9時) (レス) @page45 id: 465dec3a48 (このIDを非表示/違反報告)
華夜(プロフ) - 衝撃展開...... (2023年3月28日 11時) (レス) @page34 id: e1dc7047a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅累 | 作成日時：2023年1月9日 11時
