late ページ22
三途さんはへたり込んでいる私の上に覆い被さるようにして、気づかば私は床に縫い付けられるかのように押し倒されていた。
両手首を押さえつけられて、冷たいフローリングの床を全身に感じて身震いしたくなる。
「痛……っ」
血管すら圧迫するのではないかという程の力で手首を押さえられて、思わず苦悶の表情をもらしても三途さんは止まる気配すらない。
「A……愛してる」
首元に口付けて、それと同時にチクリとした痛みに襲われる。
キスマークでもつけたんだろう。あぁ、そんな見えるところにつけられちゃ、明日は外に出れないや。
状況とは別に、頭の中をそんな能天気な思考が埋め尽くす。
「愛してる……あいしてるんだ……」
三途さんの声と甘ったるい吐息が耳にかかって、声をもらしそうになる。
……ダメだ、抵抗しなきゃ。
じゃないと……。
「だから……どこにもいくな」
私の頭の中には、どこからともなくサイレンがうるさく響き渡っていて、本能が警告音を鳴らしているかのようだった。
だけど身体は、ぴくりとも動かせない。
「ずっと、俺の所にいろ」
三途さんはそう言って私の首筋に噛みついた。
痛覚で目の前がチカチカして、星が飛んだように思えた。
「だれよりも、誰よりもあいしてる」
「……っ‼︎」
「あいつなんかより、ずっと」
……あいつ……?
放たれた言葉について考える暇すらなく、彼はその香りと同じくらい甘ったるい口付けを落とす。
私は酸素を得ることすら叶わなくなってもがいたが、抵抗も虚しく、酸欠になってそのまま気を失った。
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——————
「——ちゃん」
「Aちゃん! 聞いてる?」
「——えっ」
ハッとして意識を戻すと、制服を着た少女が不満げにこちらを覗き込んでいた。
「もー、人が話してるのにぃ」
「ご、ごめん……」
「大丈夫? ぼーっとして」
反射的に謝ると、隣に座っていたもう1人の少女が心配そうにこちらを窺った。
……私は、この人たちを知っている。
「大丈夫。ありがとう、———ちゃん」
あれ……? 彼女たちの名前、なんだっけ。
「あ! 見てみて、三途くんだ! 今日もカッコいいな〜」
刹那、ピシッ、と氷を張ったような感覚が私の身体を覆う。
三途……くん……?
聞き覚えのあるようなその単語とは別に、目で追った視線の先の人物の顔は、薄ぼんやりと靄がかかっていた。
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ぱーぷる姫(プロフ) - こういうの普段は読まないですけど、タイトルに惹かれました。読んで正解でした。鳥肌です。ありがとうございました (9月30日 18時) (レス) @page43 id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
いちご丸 - 闇深いけど好きです笑 (9月2日 0時) (レス) @page44 id: 7e45dba670 (このIDを非表示/違反報告)
海 - やばい、ちょー好き、ストーカー系好きなんですよね笑 (6月4日 9時) (レス) @page45 id: 465dec3a48 (このIDを非表示/違反報告)
華夜(プロフ) - 衝撃展開...... (2023年3月28日 11時) (レス) @page34 id: e1dc7047a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅累 | 作成日時:2023年1月9日 11時