assure ページ15
同じテーブルを囲って夕食をすることは私が提案した。
一緒に住んでるのにご飯は別々なんて真似はできなかった。それに今まで愛してくれていた彼を流石に蔑ろにもできなかったから。
夕食は全部彼が作ってくれた。
私も手伝うと言ったのだが、まだ退院したばかりだから休んでろと手伝わせてもらえず。
記憶が戻ってからは病院食ばかりだったので、普通の料理は新鮮な気がする。
「……三途さん、その、生活費とかってどうなってます……?」
箸を止めて恐る恐る訊いた私と対称的に、三途さんはあっけらかんとして答えた。
「家は元々俺が持ってた。生活費は割り勘」
元々⁉︎ どんな金持ちなんだこの人は⁉︎
何のために持ってたんだ……と、今はそんなことを訊いてる場合ではなく。
「えっと、非常に言いにくいことなのですが……」
「何だよ、さっさと言え」
「貯金ないです」
数秒の間。
お互い手が止まり暫く無言のまま目が合う。そろそろ気まずくなってきたので、私は取り繕いながら口を開いた。
「入院費は財布から払ったんですけど、先程確認したら貯金ほとんどなくてですね……」
「知ってたけどな」
「……え」
夕食を口に運んで、視線はおかずに向けながら、またなんてことないように食事を再開する彼をよそに、私は数秒の間フリーズした。
「そもそもお前が貯金ねぇって言うから一緒に住むことにしたんだよ。なんでかは頑なに教えてくれなかったけどな」
「なっ……え?」
「何に使い込んじまったんだよ。貢いでる男でもいんのか?」
「それは……どうでしょう。記憶がないので何とも」
「チッ……憶えてたら今すぐそいつをスクラッ———殴りに行くんだけどな」
今すごく物騒な言葉が聞こえたような気がするけど、気にしないでおこう……。
今は私の散財事情の方が大事だ。
「私、他に何か言ってませんでしたか」
「訊いても教えてくれなかったっつってんだろ」
面倒くさそうにあしらう三途さんだが、一方の私はそれどころではない。
前の私は恋人である三途さんにも理由を伝えれないようなことで、散財していたらしい。
本当にホストに貢いでたんじゃないでしょうね……?
「それと私、何故だか仕事も辞めておりまして……」
「あー……なら丁度良かったんだけどな」
逡巡したように箸を止めて、三途さんは目を伏せた。
どこか哀愁のようなものも感じられる瞳には、きっと前の私が写っている。
彼が愛した、かつての私が。
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ぱーぷる姫(プロフ) - こういうの普段は読まないですけど、タイトルに惹かれました。読んで正解でした。鳥肌です。ありがとうございました (9月30日 18時) (レス) @page43 id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
いちご丸 - 闇深いけど好きです笑 (9月2日 0時) (レス) @page44 id: 7e45dba670 (このIDを非表示/違反報告)
海 - やばい、ちょー好き、ストーカー系好きなんですよね笑 (6月4日 9時) (レス) @page45 id: 465dec3a48 (このIDを非表示/違反報告)
華夜(プロフ) - 衝撃展開...... (2023年3月28日 11時) (レス) @page34 id: e1dc7047a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅累 | 作成日時:2023年1月9日 11時