duce ページ14
———貯金はほとんど無かった。
何に散財したのだろうか。
そうであったとしても、良い会社に勤めておきながらこの貯金額は有り得ない。
「(まさかここの家賃が高すぎるとか……⁉︎)」
いや、でもそんなこと三途さんが見逃すはずはないだろう。
一般的に言っても、恋人がそんな切り詰めた生活になるような家に住むとも考えられない。
考えられるとしたら、私がそれでもここに住みたくて、貯金がギリギリなのを黙ってたか。
それとも会社も辞めて、こんなに散財するくらいだから、私が事故に遭った日、本当に私は死のうとしてたのかもしれない。
詐欺にあったとか……?
それでお金もなくなって死のうとした?
恋人にも相談もせずに?
考えれば考えるほど、わからなくなる。
本当に一番の謎なのは私自身だ。
一体、AAの身に何が起こったのか。
家族も友人も、会社も金も無い。
まるで、通り魔に襲われたのも計画の内と思えるくらいに用意周到だという考えに至った途端、冷や汗が背中を伝った。
—————————
数日も経てば、通り魔騒ぎもすっかり鎮火していた。
あれ以降目立った事件は起きておらず、せいぜいが放火や窃盗くらいで、関連性を調べているという旨のニュースが淡々と流れていた。
通り魔事件も、被害者5人というそこそこの事件だったと思うのだけど、こうしてあっさり風化していくんだなと思うとどこか複雑な感情になる。
ニュースを消して、普通ならここでぼーっとしたいところだが、どうもこのリビングも他人の家にいるみたいで落ち着かなくて、暫くの間ソファには座らずにウロウロしていた。
綺麗に掃除が行き届いている部屋で、テレビのリモコンに至るまで全てきれいに並べ揃えられている。
私は入院していたから、三途さんが掃除をしていたのだろう。潔癖症なのか、ホテルのように綺麗な部屋は逆に居心地が悪かった。
「帰ったぞ……って、何してんだ」
落ち着かなかったが、座る場所もわからずリビングで正座をしていると、帰ってきたのか部屋に入ってきた三途さんが訝しげな顔をした。
「お、おかえりなさい……?」
同棲している恋人に何と言葉をかけたら良いのかわからず、自分でも混乱しながら不器用に言葉を紡ぐ。
そんな私の様子が可笑しかったのか、それとも嬉しかったのか。三途さんは見られないようにか顔を逸らしたけれど、笑みを浮かべたように見えた。
やっぱりツンデレだなぁ。
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ぱーぷる姫(プロフ) - こういうの普段は読まないですけど、タイトルに惹かれました。読んで正解でした。鳥肌です。ありがとうございました (9月30日 18時) (レス) @page43 id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
いちご丸 - 闇深いけど好きです笑 (9月2日 0時) (レス) @page44 id: 7e45dba670 (このIDを非表示/違反報告)
海 - やばい、ちょー好き、ストーカー系好きなんですよね笑 (6月4日 9時) (レス) @page45 id: 465dec3a48 (このIDを非表示/違反報告)
華夜(プロフ) - 衝撃展開...... (2023年3月28日 11時) (レス) @page34 id: e1dc7047a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅累 | 作成日時:2023年1月9日 11時