変わらない思いを抱く[wrwrd] (ページ6)

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汗が六滴ページ6

思い出した。
忘れていたわけではなくて、仕舞っていた訳でもなくて、単純に、自分の一部になっていただけ。
それにしても懐かしい。俺とグルッペンの会話なんてずっとあんな感じで、くだらない事ばかりをとても重要なことのように話して、笑っていた。
大概あんな質問はグルッペンがしてくる。きっとグルッペンにも理由があって聞いているんだろうと思っていたが何故かは聞いてこなかった。これは聞く機会が訪れたなと笑う。

と、呑気な事を考えているが、実はかなりピンチである。向こうの人数がかなり多く、屋敷に少し多めの人数が残ってしまった。まぁ人数と認識していいのか分からないが、今は人数とさせて頂こう。
さて、ここからどうやってグルッペンの元に向かうかね。

紺の着物を着てひょっとこのお面を付けたのが一人で呑気に歩いている。ここに来るまで見た奴らは浴衣を着ていた。着物を着ているコイツはなにかを知っているかもしれない。
襲うか。

後ろから息を殺して羽交い締めにする。声を上げられる前に部屋に連れ込んでお面を剥ぐ。案の定人の顔はしておらず、少し怯えるが、そんな暇ではない。
探索で見つけた鋏を突き付けて、聞く。

「なぁ、嘘はつくなよ。贄は何処にいる？」
「贄？お前まさか……」
鋏をもっと顔に近付けて、首に手を置いた。
「お前は、聞かれたことに答えればええんや」
鋏を握る手に力が籠る。

「贄は、もうここに居ない」
「…………え」

口から溢れた声は存外弱々しく、鋏を落としそうになった。

「もう、移動した」