変わらない思いを抱く[wrwrd] (ページ4)

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汗が四滴ページ4

吊るされた淡い光を放つ提灯が、ここが平凡ではないのを嫌と言うほど知らせてくる。
絶えず道の両端に並んでいる屋台の店主はどれも人間ではないナニか。屋台の暖簾は読めない言語。
勿論お祭りを楽しみに来た浴衣を着ている客らしき姿も、もれなく人外。
人間である無力な俺を狙うものもここに居るのだろう。そして、それを抵抗する術を俺は持っていない。
怖くないと言ったら嘘になる。
ありきたりな言葉が脳内に浮かんできて、そんなことないじゃねぇかと鼻で笑う。
友人の、
グルッペンの為だったら、怖くない。

石畳で出来た参道を一気に駆け抜けていく。人外の姿の狭い合間を縫って、通って、駆けて。
何度も人外にぶつかったが恐怖を感じはしなかった。恐怖を感じる暇があったら、
グルッペンの、元に。

ようやくお社に着いた。のだろう。額に浮かんでいる汗を拭きたかったが、お面が邪魔で拭けないことに気付く。どうしようもない不快感を飲み込んだ。
さっきまでの参道には屋台の上に無数の提灯がぶら下がっていたのに、ここのお社の近くにはその提灯が全くない。代わりにお社の周辺には木が鬱蒼と立っている。
明らかにここだけ雰囲気が違う。
最近出てきたばかりの喉仏が上下に動く。

「……すまん、グルッペン」
もう一回、とりあえず謝っておく。

お社を正面から躊躇なく開ける。遠慮なんか捨てた。埃っぽい空気を目一杯吸い込んで、叫ぶ。
「祭りに人の子が紛れ込んだぞ！！」
言った刹那、お社の中はガヤガヤと騒がしくなる。俺は隠れ場所によさそうな場所を転々として、お社の奥に潜り込んでいく。埃が喉に絡んで咳が漏れそうになる。
これでもう引き返せない。
グルッペンを助けるために、一直線に駆けていかなくては。
もう一度、カビ臭い空気で深呼吸。

俺に手を伸ばしてくれたグルッペンを、助けなきゃ。
別にこれをお返しにしようだなんて思っていない。
でも、絶対に、助けなきゃ。