汗が三滴 ページ3
路地裏に入った。
世界が変わった。
さっきまでの人気が居ない商店街なんかじゃない。
まるでお祭りがある日の神社の参道みたいだ。でも今日、ここでお祭りがあるなんて聞いてないし、そもそもあの道の先は行き止まりだった筈だ。
すぐに分かった。グルッペンが、とんでもない事に巻き込まれてるんだって。
どうにかして、助けなきゃ。
「そこのお兄さん、人の子がこんな所に迷い込んじゃあいけないよぅ。すぐに帰りなさい」
俺がボケッと立っているとすぐ近くに建っていた屋台の人間に声をかけられた。顔は狐の面で、見えない。
「人の、子」
「んー？ 人間の匂いがしたから人の子だと思ったんだけど、違うのかい？」
「え、いや、人間です」
「だぁよねぇ。だったらここを早く去りなさい。頭が固い老害どもに頭から食われちまうよ」
自分の死。そんな事を知っても、ここを去ろうとだなんて思えなかった。
「あの、俺、捜してるんです。大切な友人なんです。知りませんか」
俺がそう聞くと、狐の面の人は首を傾げた。
「友人の名は？ あぁ、あだ名とかでいいさ。縁を見てあげよう」
「……グルッペン。って呼んでます」
「お前さん、そりゃあこの祭りの贄さ」
暫し考え込んだ狐の面の人は、簡単に口にした。
「贄、って、生け贄」
「そうだねぇ、今夜散る炎さ」
「た、助けるためには、どうしたらいいんですか！？」
「そりゃ、拐うしかないだろう」
「拐うだけで、いいんですか」
「あぁ。お前さんのような人間は此方に入ってこれるが、私達のような異形は長時間そちらに行けない」
希望が見えた。勿論その異形からグルッペンを拐う事は容易ではないだろう。
けど、やらない訳にはいかない。
「お兄さん、これをやろう」
狐の面の人から仮面を渡された。豚の、お面。
「これを被れば、普通の奴はお兄さんが人の子だと気付かない」
「ありがとうございます！」
ゴムを引っ張りお面を付ける。視野は何故か広い。
「奥のお社に行きなさい。きっとそこに君の友人は居る」
「……何から何まで、ありがとうございます！」
俺はそう言って駆け出す。
「いいねぇ。若いのは」
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作者名：サドちゃん | 作成日時：2018年5月18日 19時
