汗が十二滴 ページ12
歩いた。
歩いて足を動かして前に進んで道を流した。
目の前に、狐のお面をした奴が立っていた。
「……お待ちしておりましたってか？」
きっともう、このお面は用を為していない。豚のお面を横にズラした。
「えぇ。およそ二百年程、でしょうか。お待ちしておりました」
話が、噛み合わない。俺が知らないなにかを目の前の奴は知っている。
「なにを言っているか分からない、と言った顔をしておりますね」
クスクス笑いながら言われた。
「道中に伏線は置いておきました。考えれば分かりますよ」
「……別に、分からんことがあってもええやろ」
やけくそに紛れてそう言う。
「確かに、明確にしないと面白い所はありますね。ですが、今回の件は、明確にしないと読者の皆さんに怒られてしまいますよ」
訳が分からない。理由が分からない。目的が分からない。から、脳が動かない。
「ふむ。では、こうしましょう。その事が分かれば、彼は貴方の元に返しましょう」
頭に血が上った。彼とはグルッペンの事だろう。なら、何がなんでも分からなければならない。
考えた。
自虐気味に笑い、俺はこう言うことにした。
「俺の両親を殺したのはお前だな？」
目の前の奴は答えた。嬉しそうに、楽しそうに、愉快そうに、報われたように。
「えぇ、そうでございます……！」
「そーかそーか」
感極まった様子で俺に跪く。俺は手を伸ばして、そいつの狐のお面を取った。狐のお面に隠された顔が顕になる。俺を見る目に、笑ってしまう。
「あぁ、見覚えがあるな」
「本当ですか。光栄で」
「半年前の、同級生の目とそっくりだ」
言葉を途中で遮って言う。言いたいことは言えたので足を振り上げて腹近くを容赦なく蹴り飛ばした。
「他者を利用しようとしている、目やな」
苦しそうに歪む顔に付いている口がゆるゆると動く。
かみさま、と。
「さーてと、グルッペンを＊＊＊＊＊＊」
俺は笑顔でそう言った。
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作者名：サドちゃん | 作成日時：2018年5月18日 19時
