汗が十一滴 ページ11
俺の両親は小学生の時に死んだ。
母方の実家がまだ幼い俺を引き取った。
おばあちゃんはニコリとも笑わない俺の頭をよく撫でて、偉いね、と言う。そして、よく喋る。
おじいちゃんは喋ろうとしない俺に色んなことを教えてくれる。そして、荒々しく俺の頭を撫でる。
あの大きな入道雲の中にお母さんとお父さんが居るのかな。なんて馬鹿みたいな事を考えて縁側に座っている時に、おじいちゃんは俺の隣に座った。
「お前、皿洗いはどうした」
お昼前、おばあちゃんが急用で外に出てしまい、空になった食器は洗剤が付いたまま、流し台に置きっぱなしにしておいた。何故途中で投げ出したんだろう。多分面倒臭かったんだろう。そんな俺の態度におじいちゃんは怒っているようで。
「……いいか。一度やろうと思った事は、絶対にやり遂げろ。途中で投げ出すことは絶対にやっちゃいけない」
確かにおじいちゃんが言っていることは正しい。自分が、間違っている。
おじいちゃんの方を向いて、俺は目線を下げた。
「…………ごめん、なさい」
そう言うとおじいちゃんは荒々しく俺の頭を撫でて、背中を叩いた。早く洗ってこいという事だろう。俺は縁側から立ち上がって流し台に向かった。
それが、おじいちゃんとの最初の会話だ。
そうだよ。
知らず知らずのうちにおれは膝を床に付いてしまっていたらしい。重い足を無理矢理動かして立ち上がる。
何忘れてんだよ。
俺は、グルッペンを助けるためにここに来たんだろうが。
暗闇をまた歩き始める。
グルッペンの元に行く為に。
両手首に巻き付いている手錠が重くて重くて仕方ない。最後に会えたトントンの表情を思い出す。あのまま帰ってくれただろうか。責任を感じて、追いかけてはいないだろうか。そんなことをしなくていいんだ。
「俺がお前を助けたのは、下心ありきの事だから」
誰もいない空間に、言葉は砕けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サドちゃん | 作成日時：2018年5月18日 19時
