どうしようもなく愚か者。 ページ6
空は私達の現状なんて知らんぷりで太陽が元気に顔を出しているが、浮かんでいる雲の色は灰色だった。
美しい青に薄汚い灰。
不似合いな空を鼻で笑い、いつまで経っても本屋から出てこないアイツに怒りを覚える。
まぁアイツが本屋で何時間も粘るの日常茶飯事じゃないかと自分に言い聞かせ、怒鳴り混もうと浮かした足を地につける。
上を見上げるのも飽きたので、ポケットに手を入れて煙草とライターを取り出す。
箱を揺らして一本取り出して口で加えた後に火を付けた。
嗅ぎ慣れた臭いと多少の味が口に広がった。先程まで降り積もっていた怒りは自分が吐き出した息に飛ばされ塵と化す。
さほど綺麗でも無かった空に煙が重なり、多少は汚くなるかと思ったが、汚い事は変わらず表情はピクリとも動かない。
汚れているものを汚しても汚い事に変わりはない。
案外論理的な結末になったが、それがどうしたと言う感じだ。
「一本、来れよ。」
いつの間にか隣に並んでいたアイツ_佐紀に言われた通りに煙草をくれてやろうと思ったが面倒くさくなり煙草とライターをまとめて渡す。
不満そうに舌打ちはしたが、丁寧に一本出してライターで火を付けて僕に渡す所が佐紀の几帳面な部分だ。
「良い本は見付かったか?」
「もう国内は駄目だ。だがまぁ、江戸川乱歩が有ったので有るだけ買った。」
「おいおい、今日の夕飯代は?」
「一食食わなくたって死なねぇが本が無ければ俺は死ぬぞ。」
そりゃ大変だ。そう言って煙草を右手で握り潰した。皮膚が焼けた感触が手に残る。
手を開いてくしゃくしゃに歪んだ煙草がゆっくりと落ちていく。
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作者名:サドちゃん
作成日時:2016年9月13日 19時