星の幸福[短編集] (ページ26)

今日:8 hit、昨日:1 hit、合計:2,688 hit

ごめん、ごめん[npr] ページ26

昔から生きる意味が分からなかった。常に生きる理由が見つからなかった。
だからいつも死にたかった。
電車に飛び込んだり学校の屋上から飛び降りたりするのは両親に迷惑がかかるから駄目で。
首吊りは死体が汚くなるから嫌で。薬で死ぬのは苦しいから嫌で。
日常生活を謳歌する中に、誰の迷惑もかけない死に方なんてそうそうに無かった。

そんな死亡願望を周りに悟らせない生活をする事、十数年。私の両親は死んだ。寿命で。
葬式も終わり、忙しい時期が過ぎ去った後にどっと来たのだ。
猛烈に、死にたくなった。
もう死にたかった生きていたくなかった人生を諦めたかったこれ以上歩んでいきたくなかった。

どうにかして死のう。今すぐ死のう。曖昧で明確な意思を持って立ち上がる。
携帯が鳴った。
幼なじみの表示。
とりあえず出た。

「……大丈夫なの。ちゃんと休んでる？ご飯は？寝た？」
怒濤な質問の声色に冗談なんて混じってなかった。
ふと、気まぐれだ。
今まで隠してきたのが、面倒くさくなったんだろう。

「死にたい」
電話越しの彼が息を飲む音が聞こえた。
「もうやだ、生きていたくない。つまらないくだらない楽しくない生きていたくない。
死にたい、死にたい死にたいずっと死にたかった、
だから、じゃあね、蘭たん」
蘭たんの返答を待った。止めるのかな、蘭たんは。

「…………ごめん」
そう聞こえて、通話が切られた。

笑えた。

ふらふらと立ち上がりベランダへ出る。
マンションに住んでいる私の家のベランダは
少し高い。
飛び降りれば、きっと死ねるだろう。

しばらく風を感じて、携帯を落として、壊れる音を聞いて、笑って、身を乗り出した。

後ろに、引っ張られた。

肩で息をして、汗だくになった顔で私の手を握っていた。
「……ごめん。つまらなくても、くだらなくても、楽しくなくても、生きていたくなくても、死にたくても。
俺はAに生きていてほしい。

ごめん、Aの言うこと、叶えてあげられない」
蘭たんは、今にも泣きそうな顔をしていた。