8 ページ8
座り込んで動かない私に彼は同じように膝を付きしゃがみ込んだ。
そして私の頬に手袋越しの手が触れられた。
「貴女の事は私が命に代えてでも守ってみせますので貴女はただ笑っていて下さい。」
「私だってアダムの役に立ちたいよ…守られるだけは嫌だ」
「……」
突然彼が黙ったので不思議に思い彼の顔を覗き込んでみるとほんのりと頬が赤らんでいた。
「貴女は本当に狡い…」
「えっ、何か変な事言った私？」
「…無自覚か」
城に仕えている人達が何処からか銃声を聞き付けたのか私の身の安全を確認しにやって来てくれたのでそのあとの会話は有耶無耶になってしまい結局会話の意図がよく分からないままその日彼と会う事は無かった。
翌日命が狙われていると分かった私は護身術を覚えようとアダムの稽古部屋にこっそり忍び込む事に成功した。
よほど稽古中の自分を見られたくないのか昔から稽古だけは絶対に見せてくれなかったので少し狡猾な手段を取ることになってしまった。
罪悪感があるかと言われれば多少はあるが今はそんなこと言っている場合ではないのだ。
「そこに隠れているのは誰だ、出て来い！」
突然壁越しから怒声がしたので口を塞がなければ叫んでしまう所だったぐらい正直かなり怖かった。
彼のこんな声は初めて聞いたのであまりの驚きに声も出せず身を竦めながら壁に隠れているとコツコツと足音を立て彼がこちらに向かって歩いてきているのが分かった。
「出て来ないなら部屋ごと凍らせるぞ！」
「わっ、私！！！A！！」
凍らされたら一溜りもないと身の危険を感じ、私は恐怖で腰が抜けた体で床を這いずり壁からひょっこり顔を出した。
彼はかなり驚いた顔をした後珍しく私を睨みつけるように見た。
これは長年の付き合いだからこそ分かるが、彼がかなり怒ってるとすぐに分かった。
「勝手に入ったりしてごめんね…？」
「以前からずっとこの部屋にだけは入らないで下さいとお願い申し上げてましたよね…？」
「はい…」
「何故破ったのですか？」
言い方がかなり淡々としていたからそれが余計に恐怖を煽った。
私は唾を飲み込む、彼から視線を逸らすことなくゆっくりと口を開いた。
「護身術を…覚えようと思って」
彼は大きい溜息を吐くと、床に倒れ込んだ状態の私に手を差し出した。
「一先ず立ってください、話はそれからです」
「…腰が抜けて立てないデス」
何とも嫌な沈黙が流れた後アダムは私を抱き上げると無言で医務室へと運んでくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
骸蜘髏巍屍龍(プロフ) - コメント失礼します。話の構成などしっかりしていて楽しく読ませて頂きました。もっと評価されるべきです。 (2018年12月7日 22時) (
レス) id: 959d44c789 (このIDを非表示/違反報告)
ルビィ - ブリさんはじめまして！小説を読ませていただきました！これはこれでありかなと思いました！今度はくっつけたものを作ってもらいたいです！作ってくれたら大変嬉しいです！ (2018年11月4日 6時) (レス) id: 550de2ef3a (このIDを非表示/違反報告)
扇ちゃん - ブリさんお疲れ様でした...！恋人もいいですが、確かにこの終わり方もアリだと思いましたヾ(*‘ω‘ )ノぜひ別ルートも読んでみたいです｡・:＋° (2018年11月3日 23時) (レス) id: bbbfe29df4 (このIDを非表示/違反報告)
blackReaper(プロフ) - 初コメ失礼します！とてもいい作品でした！別ルート見たいです！ (2018年11月3日 22時) (レス) id: c135075968 (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - はじめまして！最後まで読ませていただきました。とても楽しませてもらいました！別ルートも読んでみたいです。 (2018年11月3日 20時) (レス) id: dc95947527 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ブリ | 作成日時：2018年10月25日 11時
