#63 ページ13
「実は私、バンタン専属のスタイリストだったんです」
『えっ』
「まぁ、訳あって辞めちゃったんですけどね」
そのとき、数ヶ月ほど前の記憶がフラッシュバックした
“俺は前のようにはならねぇと信じてる”
私がバンタンの専属になった日にソノクさんが言っていた言葉だ
私は何となく、この言葉の意味が分かった気がした
『辞めたなら、何で今更·····』
「何でって·····久しぶりに会いたくなったからですよ。他に理由なんてありますか？」
『はぁ』
「私、バンタンの新しいスタイリストさんとは仲良くしたかったんですけど·····生憎、あなたみたいな人はあんまり好きじゃないの」
『奇遇ですね。私もあなたみたいな人は嫌いです』
「そういうことをはっきり言うところも好きじゃない。どうやら、私の1番の障害はあなただったみたいですね」
俯き気味だった彼女が顔を上げて、私の目を捉える
「あなたがバンタンのスタイリストを辞めて、二度と彼らに近づかないと言うなら、私はこれ以上何もしません」
『私は、
辞める気もないし、あなたに自由にさせる気もないです。誰にも手出しはさせません』
「·····その決断をしたこと、後悔しないといいですね？」
彼女は笑みを浮かべたまま言うと、席を立った
そして、そのまま喫茶店を出て行った
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作者名：ローウェイ | 作成日時：2022年8月28日 1時
