【℃R】日常に色づきを【短編】 (ページ8)

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押してダメなら【sly】ページ8

「ん、おつ〜ばいばい」

今日もノルマの配信を終えて、リビングに戻る
スマホを持ってソファーに座ったら、Aが隣に座って頭を寄せてきた
普段はAの方から近くに来ることはあまりない
緩みそうになる口元を我慢しながら、平常を装って口を開く

「なに」

聞いても答えないし、今は、作戦中だから
本当はいつも見れないAを堪能していたいけど、立ってAから離れる。

「オレ、まだやることあるから」

嘘だけど
とりあえず何か持って部屋に行こうと、キッチンに向かう

「せりー…」

コーヒーでも飲もうかと準備していたら、急に服の袖を引っ張られた
ちょっとびっくりして後ろを見ると、Aが俯いて立っていた

「どうした」

「あ…えっと…」

なかなか話そうとしない
言いにくそうな、言葉を探してるような
オレはただAの話すのをじっと待つ。

「最近、冷たいっていうか…避けられてる感じ、して
私、何かしたかなって考えたけど、わかんなくて…ッ、Sellyに嫌われちゃったかなって、」

Aの目から、ぽろぽろと涙が溢れてきた
一瞬理解ができなかった。泣かせた。オレが？

「や、まって、A。違う」

さっきよりも涙がいっぱいのAの肩に手を置いて、目線を合わせる

「A、何もしてないよ。これ、作戦だ」

「作戦…？」

「そう。あの、なんだっけ、押すのだめなら、引く？のやつ
A、あんまり甘えるのこと、しないじゃん。オレが見たかったから」

こんな顔をさせたかったんじゃない。
そもそも、これ教えてきたのMondoだ。あとであいつに文句言ってやろう、と思ったけど、自分もやりすぎた部分があったと反省する。

「じゃあ、まだ、私のこと好き？嫌いになってない？」

「嫌いじゃないよ。ずっと好きだ。ごめん、A」

「よかった…」

そう言うとまた泣き出すA

「ぇあ、やっぱり、許せないか？」

「違うよ！安心したから。本当に嫌われたかと思った」

泣きながら笑うAを見て、自分がどれだけAを傷つけていたのかようやく理解し、今すぐ自分を殴りたくなった。

「ごめん…サランへ、A」

「うん、私も！サランへ、Selly！」

にっこり笑って抱きついてくる。久しぶりに笑ってる顔見た。
甘えてくるAも見たいけど、泣いてるAを見る方が嫌だ。
こんなことはもう絶対しないと心に決めた。

この後から、Aが前よりも甘えてくるようになったのは、また別の話だ。