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背中の肉離れと脱水気味で椎名は医務室で横になっている。
何も聞こえない部屋。
そしてカーテンで仕切られたベッド。
点滴を見てはーっとため息をつく。
あれからどのくらい経っただろう。
『動きたい...』
皆のところに行きたい。
そんな気持ちでいっぱいだった。
するとガラッと扉が開く音がする。
足音がコツコツと聞こえ椎名のベッドの前で止まる。
『....』
片岡「椎名」
『....監督？』
片岡はシャっとカーテンを開け椎名のベッドに横にある椅子に座る。
椎名は片岡の表情や声。
そのすべてで結果がどうであったのかを察した。
『そっか...うッ。ごめ...んなさい。ふッ...』
その瞬間ボロボロと涙をこぼし始める。
片岡「お前はよく投げた」
『ひっく...うぅ〜ッ』
片岡「甲子園の舞台に立たせてやれなかった。俺の力不足だ」
首を横に振り泣きじゃくる彼を見るのは2回目だ。
片岡はくしゃっと椎名の頭を触る。
片岡「俺は点滴が終わるまでここにいる。そのあと戻るぞ」
『....監督』
片岡「なんだ」
『もっと...もっと強くなります！....ひっく...』
片岡「....」
『俺は強く...もう誰にも負けない』
『故障だって...怪我だってしない身体になってこのチームを日本一に...』
『日本一に...うぅ...先輩たちと...一緒に』
片岡「わかっている」
『日本一に導きたかったです....ぐすッ。ふぅ...ッ』
片岡「過去形にするな。お前はもっと強くなれ」
『はいッ！』
椎名は今でも十分強い。
でも「それでいい」「頑張ってる」そんな言葉じゃ彼は満足しない。
「強くなれ」
その言葉で彼はきっと更なる進化をするであろう。
そしてそれは後に新チームを引っ張る存在になっていくであろう。
片岡は今はただ泣いている椎名の隣に座って時間が流れるのを待った。
しばらくして点滴が終わり身体を起こすも椎名は顔を歪める。
医師「3〜5週間は様子を見ながら運動をしてください」
片岡「わかりました」
『3...3〜5週間...いや！もっと早く...』
片岡「焦るな、椎名」
ビクッと椎名の肩が揺れる。
片岡「また基礎から練り直し、1から体を鍛える」
『....』
片岡「それが今お前に必要なことだ」
『....わかりました』
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作者名：みる | 作成日時：2023年4月29日 17時
