【♦のA】小さな怪物【男主】② (ページ11)

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5回表
椎名はマウンドでふーっと息を吐きながらボールを握る。

『(次の回で俺はベンチだな...)』

御幸「(ん？千弘のやつどうした...？)」

『(1球くらいアレ投げてもいいよね？)』

御幸「(はぁ～？アレは今出さなくても...ったくしょうがねぇな)」

御幸はぱっと椎名にサインを出す。
すると椎名は嬉しそうに笑う。

男「(なんだこの球！？遅ッ...え？)」

ボールはバッターがスイングした軌道より下に落ちていく。

男「(ボールが手前で落ちた？つーか軌道が読めねぇ！)」

御幸「(はっは！うまくいったな)」

クリス「ナックルボール上手く刺さりましたね」

片岡「あぁ」

男「(くそッ！変化球何球あんだよ！この投手)」

続く2球目はストレート。
3球目再びナックルボールを投げるも...

『あ』

御幸「(バックスピンがかかってる！これは打たれる)」

椎名の放ったボールはセンター方向へ飛んでいく。
しかし正面に伊佐敷が居たためアウト。

伊佐敷「よっしゃ！おらぁ！」

『純さんナイス！』

御幸「千弘」

『ん？』

御幸は手をグーパーと動かす。
椎名はそれを見て手を動かした後「大丈夫」と意思表示をする。

クリス「やはりあの球を使うとしたら試合の前半ですね」

片岡「「...そうだな」

『(あとアウト2つ。ここからは我儘言わない)』

御幸「(OK、俺のサイン通りな)」

残りもピッチャーゴロと3振で抑え椎名はマウンドを降りる。

片岡「椎名」

『はい』

片岡「アイシングをしておけ。あと2球目のナックルボールだが...」

『見事すっぽ抜けてバックスピンかかっちゃいました。握力的にも前半しか使えないっすね』

片岡「わかってるならいい」

沢村「椎名先輩！さっきの球は何すか！？」

『あ？何が？』

沢村「あの遅くてふわふわの球っす！」

『ナックルボール？』

沢村「な！ただのへなちょこの球じゃないんすか！？」

『ぐッ』

亮介「1球目は刺さったけど2球目はただのスローボールだよね」

伊佐敷「綺麗に飛ばされてたもんな！」

『うッ...』

御幸「あんまうちの子をいじめないで下さいよ」

御幸は椎名を自分の方に引き寄せムニムニと頬を触る。

亮介「暑苦しい」

沢村「あ！椎名先輩！アイシング用意しやした！！」

『ありがと...つーかお前次から投げんだから準備しとけ！バーカ！』

沢村「はい！！」

降谷「先輩」

『お前も出るかもしれねーから準備しとけ』

降谷はぱぁっと周りに花を咲かせて頷く。