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昼休みに一ノ瀬はぼーっと中庭を眺めていると知った顔を見つける。
『治や...横におんのは女子か』
治は隣に居る女子とニコニコと笑いながら話している。
『...珍しッ』
北「なにがや？」
『！？びっくりした...信介か』
北「声かけても気付かへんかったから」
『あ、ごめん』
北「で？何が珍しいん？」
『あれ』
一ノ瀬は中庭で女子と話している治を指さす。
北「あれの何が珍しいん？」
『治が女子と話してる所あんま見ぃひんなって思うて』
北「...そうか？」
『うん』
北「俺はてっきり女子と楽しそうに話してる治にヤキモチ妬いとんのかと思うたわ」
『え、なんで？』
北「相変わらず自分には鈍感やな」
北はキョトンとしている一ノ瀬を見てクスクス笑う。
北「あれ見てちょっと嫌やなぁって思うたやろ？」
『いや？でもあそこにおんのが信介と女子やったら嫌やな』
北「なんでやねん」
『信介取られたみたいで嫌や』
北は一ノ瀬の頭を撫でるように触り「そうか」と呟く。
北「そういえば決まったん？」
『ん？イタリアのやつ？』
北「うん」
『決まったで。3月中旬くらいからちょっと参加してくる』
北「ほんまに行くんやな」
『なー。俺全然実感ないんやけど』
北「ええなぁ」
『ん？』
北「いつか日の丸背負ってバレーしとる優みたいな」
『...任せろ』
一ノ瀬は二ィっと笑い北の方を見る。
――――
『おりんぴっく？』
北「うん。世界中の国と勝負する...んー、スポーツのお祭りみたいなやつ」
『へぇ〜...北君もそれでるの？』
北「それに出れる人はほんま一握りや」
『そうなんや』
一ノ瀬は視線をテレビに移す。
テレビではバレーボールの試合が行われており、2人共真剣に観ている。
『北君、この人達すごいなぁ』
北「せやなぁ」
『決めた！北君！俺おりんぴっく出る！』
北「でる？」
『うん！この色の違う服着てる人になる！』
北「リベロ？」
『北君も一緒に出ようや！』
北「僕は無理やと思うけど...」
『えぇ...』
北「でも優くんなら大丈夫な気する。うん。優くんならなれるで」
『ほんまに！？じゃあ頑張る！』
北「そしたら俺は傍でずっと応援しとるよ」
『約束な！』
―北は急に昔の記憶を思い出す。幼き頃の記憶。
記憶の中でも笑顔の彼。
北「俺がお前から離れるわけないやん」
小さな呟きは誰の耳にも入らず教室の騒音にかき消されていった。
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作者名：みる | 作成日時：2022年12月5日 21時
